心の病気は生活習慣病?
食事や睡眠、運動などの生活習慣は健康に深く関わっています。とりわけ、その乱れが肥満、メタボリックシンドローム、高血圧、高脂血症、糖尿病などを引き起こすことはよく知られています。しかし、生活習慣が、一般的に生活習慣病と呼ばれているようなこれらの病気や症状だけでなく、心の病気にも関わっているということはあまり知られていません。
私たちの精神の中枢は脳です。脳は栄養を必要としますが、その唯一の栄養素となるブドウ糖が欠乏すると意識障害を起こす危険性があります。ブドウ糖は炭水化物(糖質)を消化することで得られるため、炭水化物を抜いた食事を続けると、脳に悪影響を与える可能性があります。
そして、継続的な低コレステロールの状態が抑うつ状態を招きやすくなるとしています。このように、食事と精神疾患には因果関係が認められます。生活習慣病とはその名の通り、生活習慣が発症原因に関わっている病気の総称ですので、食事が原因で精神疾患が発症するとすれば、精神疾患も生活習慣病のひとつといって差し支えないでしょう。
睡眠や運動も精神疾患に影響する
国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長や元村祐貴研究員らの発表(2013年)によれば、睡眠不足が続くと、抑うつ状態になったり、脳に統合失調症に近い変化が見られたりするとのことです。
改善方法としては、運動をすることで生活リズムにメリハリをもたらし、疲労により質の良い睡眠につなげることが有効です。運動では有酸素運動がおすすめです。有酸素運動のなかでも、ウォーキングや軽いランニングのようなある程度の時間を要する運動が効果的で、脳を活性化させるだけでなく、脳内伝達物質のセロトニンのはたらきも改善するでしょう。
実際、運動が抑うつ状態を改善することから、軽度のうつ病においては薬物療法の前に、運動を推奨することもあります。
日光を浴びてセロトニンを増やす
脳のセロトニンのはたらきが悪くなると、自ら何かをしようとする意欲が失われるほか、衝動的な行動が増える可能性があります。
このセロトニンの分泌には日光が欠かせません。運動時など、毎日、日光を浴びる習慣も必要になります。
食事では、特に摂取した方が良いのがバナナや緑黄色野菜、赤身肉、チーズなどに多く含まれているトリプトファンです。トリプトファンはセロトニンの原料となります。生活を改めることで精神疾患を予防する
その他、飲酒や喫煙なども精神状態に影響を与えることが知られています。
飲酒は一時的に緊張を和らげる効果がありますが、中長期的に見ると、過度の飲酒は絶望感や孤独感を強めることに繋がります。そのため、うつ病の人が飲酒を続けると、うつ病が悪化し、自傷行為に走ることもあるそうです。また、ワシントン大学医学部の研究によると、禁煙をした人は、喫煙を続けた人に比べてうつ病、統合失調症、パニック障害、気分障害などの精神疾患の罹病率が低いことが判明しました。飲酒・喫煙などの生活習慣は、続けていると精神疾患に少なからず影響を与えるようです。
生活習慣病のひとつとして精神疾患を考えることができるということは、生活習慣を改めることにより、予防したり、改善したりすることが可能であるということです。例えば、食生活においては無理なダイエットを行わないなど、栄養が偏らない食事、日常的な運動、質の良い睡眠を心がけることが必要になります。
精神疾患というと、自分には関係ないと考えがちですが、普段の生活習慣から発症する可能性があることを認識して、そうならないためにはどうすれば良いのか、そして改善するためにはどうすれば良いのかを考えてみるべきではないでしょうか。
更新日:2016年11月21日
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