精神科医が診断する時に使う14のコツ – GIGAZINE

精神科医が診断する時に使う14のコツ

By clio1789

精神医学でうつ病など精神障害を診断する時に臨床医は、外科や内科の医師と違い、多くの場合、患者と話しただけで病名を論理立てて診断します。そんな、臨床医がどのような考え方と注意でもって診断をしているのを垣間見ることができる「精神障害の診断面接を行うための14のヒント」が医療保険情報を掲載するサイトPsych Centralに記されています。

14 Tips for the Diagnostic Interview of Mental Disorders | Psych Central Professional
https://pro.psychcentral.com/14-tips-for-the-diagnostic-interview-of-mental-disorders/

精神医学の分野には、精神障害を分類する基準を提示した「精神医学の教科書」とも言えるマニュアル、精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)があります。医学博士のアレン・フランセス氏は、DSMの作成に40年間携わり、DSM第4版の編集委員長を務めました。「精神障害の診断面接を行うための14のヒント」は、フランセス氏の著書「Responding to the Challenge of DSM-5」から抜粋されたもので、DSMの作成に携わった経験と、DSM-5の疑わしい側面への注意が記されているとのことです。

◆1:患者とは初対面が重要
正確な診断は、患者と臨床医の双方の努力から成り立ちます。患者への最初の診断で誤診したり、患者と打ち解けることができなければ、その患者は二度と診療に来ないリスクあります。しかし、うまくいけば大きな効果も見込めるとのこと。患者が訪れた時のあなたは慌ただしい1日を過ごしているさなかで、一方で、その日は患者にとっての「人生最悪の日」かもしれない、ということを覚えておく必要があります。臨床医のあなたが下す患者への評価は、患者にとって毎回重要であり、あなたにとっても重要です。患者が話をして、理解されるように重点を置きましょう。

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◆2:診断を患者との共同の仕事とする
臨床医は共感していることを患者に表現し、無関心な反応をしてはいけません。患者に情報と知識を提供することにより、患者は理解し、啓発されます。そして、臨床医は「面接の評価によって患者の将来が変わってしまう」という、患者にとって重大な人生の分かれ道に自分が位置していることを忘れないようにしましょう。

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◆3:初対面の時は患者とのバランスを大事にしてください
最初の診断面接の瞬間には2つのリスクがあります。1つは多くの臨床医が陥る、「初対面の非常に限られたデータの中で誤った判断をし、間違った第一印象に縛られてしまう」というリスク。もう1つは集中するのが遅すぎ、患者の示す最初の情報を見逃してしまうリスクです。初対面の数分間は特に注意し、一方で早期に診断の結論を出さないことが重要になります。

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◆4:精神障害を判断するために使用するチェックリストの調節は常に行う
臨床医は、精神科医学の情報を収集して同じデータベースに基づいて作業している場合に限り、正しい診断を行うことができます。診断面接の際にはDSMの基準に沿った詳細なイエス・ノーのチェックリストの基づいて質問し、診断しましょう。また、診断に必要な内容を患者が答えられるような質問を行ってください。

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◆5:焦点を絞ったスクリーニング質問をしてください
患者が訴える症状について、全ての可能性を質問で探っていると時間がかかりすぎるので、診断面接はできるだけ工程が少なくなるように近道をしなければいけません。患者の症状をうつ病や・双極性障害・強迫性障害(OCD)といった精神障害の大きなグループに適切に当てはめてから、細かい部分をふるい分けていくスクリーニング質問を行い、暫定的に症状を当てはめてください。また、スクリーニング質問をしている間、薬の影響と患者に内科的疾患があるかを常にチェックしてください。

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◆6:臨床の客観性が重要だということを忘れないでください
患者の症状が「精神障害からくるものである」と診断するには、臨床医は2つの条件を満たさなければいけません。1つは、患者が見せる症状がうつ病や、不眠症・記憶障害・注意欠陥・多動性障害といった、診断書にハッキリと書ける病気のグループに入るものであること。もう1つは、その症状が社会的あるいは職務遂行に著しい苦痛をもたらしたり、客観的に重要な障害の原因になっており、そして持続的で重大な問題を引き起こす可能性がとても高いものであること。以上の2つの条件を満たす場合は、症状が「精神障害からくるものである」であると診断可能だということを念頭に置いておきましょう。

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◆7:リスク・メリットの分析を実施してください
診断書が患者に与えるプラスの効果とマイナスの効果を考えてください。つまり、患者の症状が自分自身の力で解決できないものであるとき、診断書を書くことで患者の助けになるのか、それとも損害となるものなのかを考えるということです。

臨床医のあなたが患者の症状を手がかりとして判断を行った時に、常に1つの精神障害が結論として導き出されれば、診断は適切だといえます。また、診断ができた精神障害に対して治療法を実行するには2つ条件があります。1つ目は精神障害に対して効果が立証され、推奨されている治療法があること2つ目は患者の症状に合わせた治療法があることです。しかし効果が立証された治療法がない場合、または利用可能な治療に危険な副作用が考えられる場合などは、診断は保留しましょう。

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◆8:併発症を誤解しないでください
DSMは確実性の高い診断を促進し、患者の症状を分類するためのシステムです。多くの患者は1つ以上の症状を持ち、複数の診断を要します。しかし、正確な診断には包括的な見解が必要です。患者が1つ以上の精神障害を持っているケースでも、精神障害ごとに症状を分離して判断することはできません。そして、一部の原因は脳などの器質的異常ではないケースもあります。

患者が複数の精神障害を持っていても、1つの治療方法で対応可能かもしれません。あるいは1つの精神障害が複数の原因によるものである可能性もあります。精神障害を併発している患者に対して、臨床医が併発症を誤解し不正確な診断をすれば、多剤併用が行われることも。薬の多剤併用による副作用などの危険性についても、念頭に入れておきましょう。

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◆9:忍耐を強く持ってください
5分で診断ができるような患者は少数です。診断するのに5時間かかる患者もいれば、5年の時間が必要な患者もいます。診断時の印象はあくまで「仮説」であり、慎重に確かめる必要があります。診断時の印象は、患者の精神障害についてあなたを勘違いさせることもありますが、新しい情報を得るチャンスにもなります。臨床医のあなたが診断を急げば、重大な誤りを犯す可能性があります。

◆10:患者の症状に「詳細不明」のカテゴリを使用することを恥じないでください
DSM-5には多くの障害が「Unspecified(詳細不明)」という言葉とともに記されています。これは、患者の症状持つ症状が複数の精神障害に当てはまり、厳密な境界線を引けないため。精神医学は、白黒ハッキリした判断を行い、曖昧な灰色の判断をあまりしません。そんな精神医学の中で「詳細不明」のカテゴリを使用しているのは、診断がかなり難しいことがあるためです。「詳細不明」という言葉は情報が不十分であるということを意味しており、早すぎる診断を防ぐものでもあるため、誤診を防ぐために「詳細不明」のカテゴリを使用することを恥じないでください。

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◆11:「DSM-5のその他の精神障害」を使った診断については慎重にしてください
著者のフランセス氏によると、フランセス氏が関わっていたDSM-4では、DSM-5の「その他」のカテゴリにある精神障害、性的倒錯やインターネット中毒、セックス中毒などを精神障害と定めることは、確実性が足りないため危険とされ、精神障害と定められずに見送られていました。しかし、前述したその他の精神障害の数々は、DSM-4からDSM-5へのアップデートで精神障害として追加され、認識コードが付与されました。フランセス氏は、追加されたその他の精神障害の数々は精神病とし扱うには詳細検討が必要と考えており、その他の項目にあるものは臨床や法医学の現場で使用すべきではないと主張しています。

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◆12:自分の主観的判断を絶えず分析してください
精神医学の診断は、主観的判断に完全に依存しているので、常に暫定的でなければなりません。可能な場合は常に、患者の家族や周りの人と話し、患者のメンタル・ヘルスの治療歴や病歴など、客観的な「記録」を得るようにしてください。なお、患者の病状は変化するので、前述して挙げた過去の分析を必ずしも信じる必要はありません。また、治療がうまくいかないときはいつも、診断を再考してください。

◆13:常に診断の思考を文章化してください
診断は単独ではただのレッテルです。診断に至るまでのプロセスを文章化することは臨床の助けになり、思考の経過を明らかにします。また、経過を明らかにすることで誤診訴訟から、臨床医のあなたを守ります。文書化は結論を導くための論理的根拠となることもあります。診断に使用した思考プロセスを文章化することは、正しい診断を導きます。

By Erol Ahmed

◆14:精神科の診断には賭けのように不確実性が大きいことを常に覚えておいてください
精神医学的な診断は、成功すると、患者に適切な治療と治癒の機会を与えることができ、少なくとも問題の改善につながります。しかし、失敗した場合、患者にとって有害な治療を行い、不必要な汚名を与え、患者がつかむ可能性があった治療のチャンスを失します。誤診を行うと患者は、精神医学への期待が下がるとともに、臨床医に診断された「実際には患っている精神障害」のレッテルを貼られてしまいます。その後、患者自身はレッテルの症状に沿った行動してしまう場合があります。

精神医学的な診断が患者の症状を改善するためには時間と労力が必要です。有能な診断者であることは、「完璧な臨床家である」ということを保証するものではありませんが、優れた診断技能がなければ満足のいく臨床医になることは不可能であるとフランセス氏は記しました。

引用元

★★ 宮城県仙台市 ★★

コンパス

心理士カウンセリング相談事務所

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https://compass-counselor.com

まだらー('ー')/~~

 班目幸寛(まだらめゆきひろ) フェイスブック ページへ  友達申請を是非♪  1978年生まれの宮城県出身。  元々は建築科、専門学校卒業後、建築関連の仕事に就いたがが、当人がADHDの気があり(白に近いグレー)、その時の苦労を元にカウンセラーのキャリアをスタート。  カウンセリングのメインは発達障害のカウンセリングだったが、カウンセリングを行うにつれ幅が広がり『分かっているのにできない、やめれない事』等、不倫の恋、経営者の意思決定なども行う。(相談案内へ)  趣味はバイク・自転車・アウトドア・ミリタリーグッズ収集・国内外旅行でリスクティカー。 『昨日よりも若くて、スマート』が日々の目標。  愛読書はV,Eフランクル 放送大学 心理と教養卒業 / 臨床心理プログラム 大学院 選科履修

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