あなたの耳に「音量調整ボタン」
見るからにスタイリッシュな耳栓の「Knops」は、生活のなかで周囲の環境音量を自在に調整できるよう耳にヴォリュームボタンを付けるというコンセプトから生まれた。開発した同名のオランダ発スタートアップは、音響学のプロであるミュージシャンたちによって立ち上げられた。
Knopsの目的は、「長期的な聴覚の保護」である。ツマミひとつで状況に合わせて音の聞こえ方を調整できる機能性と、一日中装着していても違和感を覚えさせないデザイン性を、同時に追求している。
従来の耳栓とは異なる最大の特徴は2つある。まず、身体の一部のように装着できる人間工学に基づいた設計思想。そして、電気的に騒音を打ち消す製品では実現できない、音響学に忠実な完全に「アコースティック」な仕組みにある。
完全にアコースティックな仕組みとは、音波を電気信号に変換していないということだ。電子製品はノイズを低減する面では長けているが、電気信号への変換時に音源が歪められたり、多少の遅延が発生したりといったデメリットがある。一方、Knopsは人体の聴覚の仕組みを忠実に再現しており、空気中を伝わる音波に直接干渉している。これにより、あらゆる周波数に対応したノイズの除去を実行しながらも、環境に応じた音質をそのまま補完してくれるというわけだ。
着けたまま生活することを前提に開発されており、シンプルなつまみの操作で遮断レヴェルを調整できる。街中の喧騒をかき消したり、コンサート会場の爆音を和らげたり、寂然たる完全な無音空間をつくり出したりできる。逆に何も装着していない状態も“再現”できるので、他者と会話する際にわざわざ耳栓を外す必要はない。
そのコンセプトは、ヒューマンインタフェイスの概念を追求した結果でありながらも、同時にファッション性を見出そうとする“ミュージシャンたちの美学”までも内包している。身体の一部であるかのように常に装着するうえで重要なのは、デヴァイスとして外から目立ち過ぎず、使用者にとって異物のような存在感が限りなく小さいということだ。
シンプルな円盤状の見た目と、蓄音機の円錐部分を彷彿とさせる挿入部からなる構造は、幾度となく試作を繰り返して得たフィードバックを基に、ようやくたどり着いたデザインなのだという。少し大きめのピアスと見間違えてもおかしくはない。
Knops設立者の一人で、技術部門の責任者を務めるアルヘン・ド・ホンは、自身も音響学で博士号を取得した同分野の専門家だ。いかにして現実の環境音をユーザーに直接届けるのか。そうした音に馳せる想いを、彼は次のように語っている。
「電子機器を使って環境音を人工的に合成するのではなく、われわれは耳に伝わる実際の音波を捉えて部分的に改変しています。つまりユーザーが聞いているのは、すでに耳へ到達していた物理的な圧力波であり、紛れもない本物の音というわけ
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