大人のADHD 15のチェックリスト
工藤千秋 / くどうちあき脳神経外科クリニック院長2017年5月31日
私は脳神経外科とともに心療内科の診療を行っていますが、その中で時折遭遇するのが、いわゆる大人の発達障害の患者さんです。従来、発達障害は子供の病気と思われてきましたが、徐々に研究が進むにつれて、成人後も発達障害で苦しんでいる人が少なくないことが分かってきました。そこで今回は、発達障害の一つである注意欠陥多動性障害(ADHD)を取り上げます。大人の場合、どのような症状があると、ADHDが疑われるかをお話ししたいと思います。
国内の有病率は1.7%?
ADHDは、不注意▽多動性▽衝動性を主とする障害です。簡単に言えば注意不足、そわそわして落ち着きがなく、キレやすいというもので、その結果、仕事や学業の継続、成果達成なども含めて社会生活に支障をきたします。生まれつき脳内の神経伝達物質のバランスが悪く、その結果、中枢神経の機能に何らかの障害が発生するという説が唱えられていますが、詳細な原因はまだ解明されていません。過去には脳の一部の損傷などが原因と言われたこともありましたが、現在では画像診断上、脳に異常は認められないことが分かっています。
症状はおおむね7歳くらいまでに出現し、学童期の有病率は3~7%で男性に多いとされています。かつては成人期になると、症状が落ち着き目立たなくなる(寛解)とも言われていましたが、現在では半数以上が成人期になってからも症状が続くということが分かってきました。浜松医科大学精神神経医学講座などが、18~49歳の男女1万人を対象に行った調査に基づいて算出した成人のADHD有病率は推定1.65%とされていますが、「実際にはそれよりも多い」という説もあります。ざっくりいえば大人の50人に1人はADHDの患者さんと言ってもいいでしょう。
病態が極めて多様なADHD
最近は大人のADHDについてテレビなどで報じられるようになりましたが、「家の中がゴミ屋敷のようになっている」「書類や資料などがタワー状に積みあがった仕事机のわずかな隙間(すきま)で仕事をしている」、など、いわゆる「片付けられない症候群」がその症状の代名詞のように紹介されていることがあります。
これは間違いではありません。しかし、ADHDにみられる症状は実に多様で、このように特定の症状のみに絡めてADHDを語ることは、逆にこの病気に対する誤解を助長する危険性もはらんでいます。そこでまず私のこれまでの診療経験からADHDの患者さんにありがちな日常生活での症状を箇条書きで挙げてみたいと思います。
(1)重要なことを後回しにしてしまう。
(2)計画したことが最後まで実行できない。
(3)単純なルーティンワークにどうしてもなじめない。
(4)夜に熟睡できない。
(5)コーヒーにうまく砂糖が入れられない。
(6)はさみがうまく使えない。
(7)新しい機械の使い方を教わってもうまく作動させられない。
(8)自動車の運転中にやたらとクラクションを鳴らす、頻繁に車体をこすってしまう。
(9)運転中に車間距離がつかめない。
(10)スリッパをうまく脱ぐことができない。
(11)電気をつけっぱなしにしがちである。
(12)鍵をかけ忘れる。
(13)メールを書こうとしても文章がまとまらず何度も読み返す、送信相手を間違える。
(14)ネガティブシンキング(悲観的)になりがちである。
(15)自分を抑えることができない。
これらのうち複数が当てはまる場合は、ADHDを疑って専門医を受診してみても良いと思います。私の診療経験から思いつく典型的な症状だけでもこれだけ挙げることができるのですが、実際のADHDの患者さんで見られる症状はさらに多様です。
診断を困難にする他の精神疾患の併発
ADHDは現在、アメリカ精神医学会が策定した「精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)」という診断基準に基づき、そこで示された合計22項目にどれだけ該当するかで診断されます。
高血圧や糖尿病などと違い、具体的な検査値で判断できるわけではなく、また脳梗塞(こうそく)のように画像診断で異常が認められるなどのはっきりした指標はありません。さらに原因もまだ明確ではないことから、診断そのものが難しく、先ほどの推定有病率も常に幅のあるものになってしまうのです。
そして、症状の多様性と診断基準が持つあいまいさ以外にもADHDの診断を困難にしている理由があります。
それはADHDの患者さんでは他の精神疾患を合併していることが多いからです。例えばハーバード大学医学部ヘルスケアポリシー部門教授のロナルド・ケスラー氏らが、2006年にアメリカで行ったADHDの大規模調査によると、ADHDの患者さんでは38.3%が気分障害(うつ病、双極性障害など)、47.1%が不安障害(全般性不安障害、パニック障害など)、15.2%が物質使用障害(薬物依存など)を併発していることが分かっています。
このことはADHDなのにうつ病やその他の精神疾患などと診断される、あるいはその逆のケースもあるということです。これを「誤診」と言ってしまうのは簡単ですが、そもそもADHDやその他の精神疾患は明確な検査値などはなく、アンケート調査のような形で回答を点数化するなどして診断されるため、初診から数回の診察で正確な診断に至らないという事態は宿命ともいえるものです。
この結果、最初の診断名で治療を行い、効果が認められなければ、薬物治療ならば薬剤の変更、場合によっては診断をし直すという「トライアル・アンド・エラー」をある程度許容しなければなりません。
治療では主治医の方針を優先に
現在、ADHDの治療は、ヒトの気分や行動のもとになるものの考え方、つまり認知のあり方の修正を促す認知行動療法や薬物治療が中心となります。薬物では日本国内でアトモキセチン(商品名・ストラテラ)や塩酸メチルフェニデート(商品名・コンサータ)の2種類がADHDの適応で承認を受けています。また、最近では新たにグアンファシン塩酸塩(商品名・インチュニブ)もADHDの適応として承認を受けたばかりです。
ADHDを疑って専門医を受診した場合、そこでADHDあるいはその他の精神疾患と診断される、あるいは「何ともない」と言われることもあるでしょう。そしてもし治療が行われると決定した場合、特に気をつけてほしいことがあります。それは治療を開始したら、インターネットなどに氾濫する不確かな情報をうのみにせず、むしろそれらを一定期間は遮断する覚悟で主治医の方針を順守して治療に取り組むことです。この種の病気では先ほど話した「トライアル・アンド・エラー」も念頭に腰を据えた治療が必要になるからです。そのうえで3カ月程度を目安に最初の治療が効果を示さなかった場合は、主治医と治療方針を再び相談しましょう。【聞き手=ジャーナリスト・村上和巳】
工藤千秋 くどうちあき脳神経外科クリニック院長 くどう・ちあき 1958年長野県下諏訪町生まれ。英国バーミンガム大学、労働福祉事業団東京労災病院脳神経外科、鹿児島市立病院脳疾患救命救急センターなどで脳神経外科を学ぶ。89年、東京労災病院脳神経外科に勤務。同科副部長を務める。01年、東京都大田区に「くどうちあき脳神経外科クリニック」を開院。脳神経外科専門医であるとともに、認知症、高次脳機能障害、パーキンソン病、痛みの治療に情熱を傾け、心に迫る医療を施すことを信条とする。 漢方薬処方にも精通し、日本アロマセラピー学会認定医でもある。著書に「エビデンスに基づく認知症 補完療法へのアプローチ」(ぱーそん書房)、「サプリが命を躍動させるとき あきらめない!その頭痛とかくれ貧血」(文芸社)など。
引用元
私は脳神経外科とともに心療内科の診療を行っていますが、その中で時折遭遇するのが、いわゆる大人の発達障害の患者さんです。従来、発達障害は子供の病気と思われてきましたが、徐々に研究が進むにつれて、成人後も発達障害で苦しんでいる人が少なくないことが分かってきました。そこで今回は、発達障害の一つである注意
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