労働より休息を!
天才になるには、まず「休息」だ! 歴史上の偉大な天才の多くは、実は「怠け者」だったという。彼らは短い労働時間でいかにして業績をあげたのか? 逆に働いていないときは何をしていたのか? 徹底的な調査から導き出した「休息テクニック」を紹介しよう。
偉大な天才は、いまの会社ならクビになる?
歴史に名を残した天才たちは、どんな風に「休息」して、身体や脳を回復させていたのだろうか。
彼らは週に100時間働くワーカホリックだったのだろうか。それとも1日に4時間程度しか働かない怠け者だったのだろうか。
そんなことを知りたい人にとって参考になるのが『シリコンバレー式 よい休息』(日経BP社刊)である。
この本の著者は、シリコンバレーのコンサルタント、アレックス・スジョン‐キム・パン。クリエイティブな業績で知られる人物の生涯を調べてみたところ、意外な事実に気づいたのが本の執筆のきっかけになったという。
「創造性の高い仕事をした人々の日々の生活をじっくり見てみると、それぞれ最も重要な業績と思えるものに費やしていた時間は、1日のうちほんの数時間でした。残りの時間は、山道を歩いたり、昼寝をしたり、友人と散歩をしたり、あるいは座って考え事をしたりしていました。
つまり、彼らの創造性と生産性は、エンドレスな努力の成果ではありませんでした。彼らの人並みはずれた偉業を生み出したのは、適度な労働時間だったのです」
たとえば世界史上最も有名な科学書のひとつ『種の起源』を書いたチャールズ・ダーウィン。ロンドン南東のダウンという村で暮らしていた彼の典型的な1日は、次のようなものだった。
朝、起床すると、まず散歩と朝食。それから午前8時までに書斎に入り、1時間半ほどしっかり仕事をする。9時半になると、届いた郵便物に目を通し、手紙を書く。10時半から正午までが本格的な研究の時間。邸宅の敷地内にある鳥小屋や温室、実験室などで過ごした。
それから1時間ほど散歩をしてから昼食をとり、また手紙の返事を書く。3時からは1時間ほど昼寝。昼寝の後、もう一度散歩をしてから、書斎に戻り、家族と夕食を一緒にとる5時半まで仕事をした。
つまり、ダーウィンが、1日のうちに仕事をしたのは、午前中に「90分」のセッションが2回、午後に「90分弱」のセッションが1回だった。
パンはこう指摘する。
「もしダーウィンが現代の大学教授だったら、テニュア(終身在職権)は得られなかったでしょう。米国の会社で働いていたら、1週間以内にクビかもしれません」
だが、1日に4時間程度しか働かなかった天才は少なくない。フランスの数学者アンリ・ポワンカレは、「19世紀最高の数学の天才」とも称される人物だが、頭を使う思索は、午前10時から正午までと午後5時から7時までの間にすると決めていた。英国の大文豪チャールズ・ディケンズは、午前9時から午後2時まで書斎にこもって5時間執筆すると、その日の仕事を終わりにした(しかもその途中、ランチ休憩をとっていた)。
こうした天才たちは、決して仕事嫌いだったわけではない。むしろ成功への意欲は人一倍強かったといっていい。彼らは仕事で成功したかったからこそ、労働時間を制限し、「休息」を大切にしていたのである。
週60時間働く人の生産性が最も低い
労働時間と生産性には、どんな関係があるのだろうか。興味深い研究が存在する。
1950年代、イリノイ工科大学の心理学教授のレイモンド・ヴァン・ゼルストとウィラード・カーが、同大学の研究者の「研究室で過ごす時間」と「書いた論文の数」を比較したのだ。
前述のパンの著書『シリコンバレー式 よい休息』から引用する。
「働く時間が長いほど、論文の数が増えるという正比例のグラフをあなたは予想するかもしれない。だが、そうではなかった。
データはM字型の曲線を示した。それは、はじめ急勾配で上昇し、週10時間から20時間の間でピークに達した後、下降に転じた。研究室で25時間過ごす研究者の生産性は、5時間を過ごす研究者と同程度だった。週に35時間働く研究者の生産性は、週に20時間働く同僚の半分だった」
「35時間を底として、グラフは再び上向きになるが、勾配はずっとゆるやかだ。週50時間研究室で過ごす研究者は、35時間の谷から抜け出すことはできたが、その生産性は研究室で週に5時間過ごす同僚と同じだった」
「50時間を二つ目のピークとして、それ以降、グラフはまた下降し、週60時間以上働く研究者は、最も生産性が低かった」
パンに言わせれば、良質の仕事を生み出すのは、良質の「休息」。だが、現代人には、「働くこと」を美徳だと考え、「休むこと」を怠惰とみなす人が多い。そのせいで「休息」の重要性を等閑視しがちなのだという。
引用元天才になるには、まず「休息」だ! 歴史上の偉大な天才の多くは、実は「怠け者」だったという。彼らは短い労働時間でいかにして業績をあげたのか? 逆に働い…
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