1日10分で脳が活性化! 「ユル体操」のすすめ
ライフ 2017.3.21
嶺 竜一=構成 中川原 透=イラストレーション 教えてくれる人:筑波大学体育系教授 征矢英昭
PRESIDENT 2016年10月3日号
だるくてぼんやり、なんだか仕事がはかどらない……。そのまま放置していると、取り返しのつかない結果に!? 食事、運動、睡眠を見直して、健康な脳と心身を取り戻そう。
海馬の萎縮で仕事力が低下
1961年、アメリカのハンス・クラウスとヴィルヘルム・ラープという2人の医師が、『運動不足病』という本を著しました。そこには今後、「運動不足」によって、頭痛、肩こり、胃痛、肥満、高血圧などの症状が引き起こされ、結果的に糖尿病、動脈硬化、心臓病、その他さまざまな内科的疾患をもたらすと記されていました。
それは現代、世界中に蔓延している「生活習慣病」の予言でした。世の中が便利になりすぎたことの弊害が始まったのです。
運動不足は、生活習慣病の原因となるだけでなく、やる気を低下させ、心にも悪い影響を及ぼします。現代ではさらに、社会的な疎外感や、過度の競争など、環境要因による慢性的なストレスが激しくなっています。身体と心の活力がともに低下し、「うつ病」が激増しているのです。外遊びなどの運動量が減った子供にも広がっており、運動不足の解消は、地球全体、全世代の課題なのです。
うつは脳のメモリーである「海馬」や「前頭前野」を萎縮させ、認知機能を低下させます。学習・記憶能力や実行機能(注意・集中、行動抑制、計画・行動力など)も損なわれます。
頭がぼーっとして仕事がはかどらないという方は、海馬や前頭前野の機能が低下しているかもしれません。
しかし、海馬や前頭前野は継続的な運動によって肥大し、機能が高まります。適度な運動をするだけで、仕事の効率も上がり、高いパフォーマンスを発揮できるのです。
ここでため息を漏らす人も多いことでしょう。「でも、運動ってしんどいよね」と。日本人の運動継続率はおよそ2割です。続けられる人たちは、どんなスポーツをやっても続きます。ランニングを始めたと思ったらフルマラソンに出場し、それにも飽き足らずトライアスロンに挑戦する。もともと運動に対する適性が高い人もいますが、残る8割は長続きせずにやめてしまいます。
多くの人がイメージする健康のための運動は、ランニングや水泳、エアロビクスなどの「ややきつい」と感じる中強度の運動(40~50代で心拍数110~130拍/分程度)を30分以上、週に2~3回行うというものではないでしょうか。実際に運動による健康増進を発信している「米国スポーツ医学会」は、その程度の運動を推奨しています。
運動が好きな人はこの程度の運動を、「心地よい」と感じますが、そうでない人は「しんどい」「面倒くさい」と思い、ストレスとなります。ですが、安心してください。中強度の運動は、代謝を高め、ダイエットの目的では非常に効果的ですが、「そのぐらいしないと意味がない」と考えるのは大きな誤解です。
我々の研究で、ヨガ、ストレッチ、太極拳、スローランニング、ウオーキングなどの低強度の運動を、ごく短い時間行うだけで、人は気分がよくなり、脳が十分に活性化されることがわかったのです。
なぜ少しの運動で、人は気分がよくなるのか。それは脳内のホルモン様物質の作用と関係があります。適度な運動は脳を刺激し、脳幹からセロトニン、ドーパミン等の神経伝達物質が分泌され、脳の神経活動を調節します。すると覚醒と睡眠サイクルが調整されます。肝臓から放出され、骨や筋肉の発達に関わるIGF-I(インスリン様成長因子I)は、運動すると脳内に取り込まれ、神経や血管を増やし、神経伝達の効率化に貢献する可能性があります。最近、主に精巣でつくられる男性ホルモンが、軽運動により脳でもつくられ、それが海馬で増加し、神経新生を促すことを動物実験で見いだしました。また、筋肉からも脂肪細胞を刺激して代謝を高めるマイオカインというホルモンが分泌され、その一部は、脳に入って認知機能を高めるということがハーバード大学の研究で発見されました。
これらのホルモン様作用は、連動して行われます。運動をきっかけとして、脳が指令を出し、臓器が互いにコミュニケーションを取りながら、ホルモンの分泌を増やしたり抑制したりして、トータルで身心を快適な状態にしています。これを「臓器円環」と呼び、脳科学の最新トピックとなっています。
ユル運動で脳の気分を変える
運動により人の脳の「快適度」が上がり、「覚醒度」は緊張でも無気力でもない中間の状態に近づくことが、私たちの研究でわかりました。快適度が低く、覚醒度が低い「だらけていて無気力」な脳が、「いきいきして元気」な脳に変わり、快適度が低く、覚醒度が高い「イライラして緊張している」脳が、「リラックスして心地よい」脳に変わるのです。
恒常的に気分がいい状態になると、前頭前野(外側部)が特に活性化し、脳の認知機能は高まります。学習能力、記憶力が上がり、集中力が増し、瞬間的に言葉が出てくるようになります。注意力、計画力、行動力も高まり、仕事のパフォーマンスは確実に上がります。さらに代謝が盛んになってエネルギーが燃やせる体になり、肥満や生活習慣病も改善します。
ではビジネスマンはどのように、運動を取り入れたらよいのでしょうか。私のお勧めは、昼休みなどの休み時間を利用して、10分程度、体を動かすことです。ウオーキングや階段昇降もよいですが、一人では続けにくいもの。そこで、会社に掛け合って、社内に軽運動のサークルをつくってはいかがでしょうか。会議室を借りて、経験のある人に講師役を頼み、ヨガやピラティス、ストレッチ、太極拳などをみんなで楽しむ。社員が快適になり仕事のパフォーマンスが上がるのですから、会社にとってもこれほどいいことはありません。
私が考案した「フリフリグッパー」という体操も試してみてください。歌を歌いながら行うと、さらに脳が活性化されますよ。注意点は、運動時の気分が快適になるように配慮することです。運動しても気分が冴えないと、認知機能を高める効果が弱まるからです。
征矢英昭
筑波大学体育系教授 ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター長。医学博士。1959年生まれ。筑波大学大学院体育研究科修了、群馬大学大学院医学研究科修了。専門はスポーツ神経科学。脳フィットネス理論を提唱。引用元
運動不足はやる気を低下させる。パフォーマンスを高めるには、10分程、軽く体を動かすだけでOK。それだけで脳が十分に活性化されるのだ。
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