1982年生まれの彼女は、20歳すぎに、「自閉症スペクトラム障害」(当時は「広汎性発達障害」)と呼ばれる発達障害の一種と診断されました。
「自閉症スペクトラム障害」は、端的に言えば、「人の気持ちを『わかる』ことがとても難しい」病気で、周囲からは「空気が読めない」「融通がきかない」といった印象を持たれることが多いといわれています。
あすかさん自身も、子どもの頃はチャイムが鳴っても草むしりを続けたりするなど変わった子どもとして見られ、叱られても何故自分が怒られているのかが分からなかったといいます。
傍から見てわかる障害ではありませんし、まだ「自閉症スペクトラム障害」という言葉もなかった時代です。
そうなると起こるのが「いじめ」。八方ふさがりになったあすかさんは、不登校や転校、退学、自傷行為を繰り返す壮絶な少女時代を送りました。
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高校卒業後は、本格的にピアノの勉強をするために国立宮崎大学に進学。そのときにはすでに、ピアノの腕前は地元でもよく知られるほどになっており、声楽やフルートの伴奏を依頼されることもよくありました
しかし、「自閉症スペクトラム障害」の特徴の一つに「一度に複数のことをこなすことが苦手」というものがあり、複数の依頼が重なるとそれらを上手くこなすことができなくなってしまいます。
あすかさんも例に漏れず、そうでした。でも、「断ったら申し訳ない」「相手がどう思うのか、わからない」「相手が怒るんじゃないか」と考えてしまい、なかなか依頼を断ることはできません。その結果、ストレスからパニック障害を起こしてしまったのです。そして、人間関係や自身の体調から大学を中退。失意に暮れました。
そんなあすかさんに大きな転機が訪れます。それは自身に発達障害の診断がくだされたことでした。彼女はそれを聞いて、ホッとしたといいます。ようやく、なぜ、人と同じことができなかったのかがわかったからです。あすかさんは障害を受け入れ、新たな一歩を踏み出します。
さらにピアニストとして大きく飛躍するきっかけとなった言葉を、音楽大学で出会った恩師からかけられます。
「あなたの(ピアノの)音は、いい音ね。あなたは、あなたの音のままでとても素敵よ。あなたは、あなたのままでいいのよ!」
この言葉はあすかさんの救いの光となりました。大きな自信を得たあすかさんは、ピアノに没頭するようになり、数々の音楽コンクールで表彰を受けるようになったのです。
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今ではピアニストのみならず、作曲家としての実力も上げ、オリジナル曲でソロコンサートも行っているあすかさん。
『脳科学者が選んだやさしい気持ちになりたいときに聞く 心がホッとするCDブック』(アスコム刊)では、脳科学者の中野信子さんが、CDに収録されているあすかさんのピアノを解説しながら、あるがままの自分になるためのマインドフルネスの大切さについて語っています。
あすかさんのピアノについて、中野さんは「やさしい気持ちになる」と評します。それはこれまで苦しんできたあすかさんだからこそ出せるピアノの音色が、聞く人の心に寄りそうような力があるからなのでしょう。
2016年10月19日に銀座・王子ホールで行われた、あすかさんにとって初の東京でのソロリサイタルとなる「心がホッとするピアノコンサート」。
初めての東京でのソロコンサートにもかかわらずチケットは完売。クラシックの名曲をはじめ、あすかさん自身が作曲した「なつかしさ」「ココロのふるさと」などが演奏され、最後はスタンディングオベーションに包まれました。
たくさんの人の心に深い感動を与えたそのピアノの音色は、次の東京でのコンサートとなる3月18日の浜離宮朝日ホールに向かいます。
あすかさんは、「『また明日がんばろう』と思えるような音を伝えたい」と言います。悩んだり、苦しんだり、躓いたりする日常の中で、「疲れたなあ…」と思うことは必ずあります。そんなときは、あすかさんのピアノにじっくり浸ってみてはいかがでしょうか。
(新刊JP編集部)
■野田あすか コンサート
2017年3月18日(水)
場所:浜離宮朝日ホール
主催:サンライズプロモーション東京、朝日新聞社
お問い合わせ先 サンライズプロモーション東京
Tel 0570-00-3337
受付時間 10:00~18:00