不安を抱えて生きている大人(米国内には4000万にもいる)の話を聞くと、不安を完全になくそうとしないことが唯一の助けになると言う人が多いです。しかし、そのことを理解して受け入れるには一生かかるかもしれません。そうなれば、良くも悪くもなく、不安をただ不安として見るようになります。『The Hilarious World of Depression(うつの愉快な世界)』というポッドキャストの最近のエピソードで、あるゲストが自分の不安に「スティーブ」という名前を付け、スティーブを時々姿をあらわすどうしようもない友だちだと思って対処していると話していました。不安がわいてきた時はいつも「もう、スティーブ、やめてよ」と言ったりするのです。
また、子どもが深刻な恐怖症のようなものを抱えている時(たとえば、犬、ウィルス、初対面の人と話すなど)、大人が「そんなに怖がらなくていいよ」と言うことがよくありますが、それでは子どもが余計不安になるだけでなく、周囲の人をがっかりさせているような気持ちになります。大人と同じように、子どもも恐怖に怯えるのではなく、不安や恐怖とうまくやっていく方法を学ばなければなりません。それには、不安にあだ名をつける方法が子どもにも有効です。
実際にこの方法は、認知行動療法を専門とする臨床心理学者Bridget Flynn Walkerなどの、セラピストたちが使っているものです。Walkerは自著『Anxiety Relief for Kids(子どものための不安解消)』の中で言っています。
子供が不安を抱えている時は、不安に頭の中を支配されているような感じになります。自分が乗っている馬が、意図していないのに勝手にギャロップで走り出すような感じです。あだ名を付けることで、恐怖を感じている瞬間にその対象を少し客観的に見ることができます。自分に“何をしているかわかっているよ、脳みそくん”と言うようなことです。
今回は、逃れられない恐怖にあだ名を付けて子どもを助ける方法をご紹介しましょう。
子どもが、頭では自分の不安が極端なものだとか、まったく訳がわからないものだということもわかっている可能性は非常に高いです。しかし、扁桃体(パニックの衝撃を司る脳の部分)が活性化している限り、知的な理解は消えてしまいます。ですから、不安に感じないように子どもに言うのではなく、恐怖と向き合うテクニックを教えるほうがより効果的です。だから、あだ名を付けるのです。
Walkerは著書の中で、あだ名は「怖いネガティブなものではなく、明るくのんきなものがいい」と書いています。バイ菌を恐れている子どもは「バイ菌虫」と名付けるかもしれません。
子どもが不安や恐怖に襲われた時に、ただその対象に挨拶をするのが目的です。Walkerは「“あっちへ行け、バイ菌虫!”とか、“お前なんか嫌いだ、バイ菌虫!”というようなことを子どもに考えさせてはいけません。ネガティブな思考を増殖させずに、客観的に見ることが目的です」と書いています。
子どもが自然に挨拶できるようになるには、少し練習が必要です。子どもが恐怖を感じているものの真似をしてあげて、さまざまなパターンで練習をしてみましょう。Walkerは患者の子どもとこのゲームをやっています。たとえば、Walkerが「ジョン、このショッピングカートに触ったら、バイ菌がくっつくかもよ!」と言うと、ジョンは「よう、バイ菌虫!」と返します。これに慣れてくれば、子どもは頭の中で(声に出さずに)恐怖の対象に挨拶をすることができます。
子どもが不安になったとわかったら、落ち着いた声で「それはバイ菌虫?」と聞いてもいいです。子供はイライラして「違う!」と言うかもしれません。ここでは、子供を無理やり納得させようとしないでください。恐怖を感じているものにあだ名を付けるという考え方を子供に与えておけば、後で子どもが自分で解決できるようになります。
恐怖にあだ名をつけるともっと怖くなるような気がして、心配する子どももいるかもしれません。Walkerは、少なくとも最初はそう思う子どももいると書いています。子どもの不安を治癒するのに最も効果的な方法だと言われている認知行動療法では、子どもに恐怖に近づいていくことを求めます。大変かもしれませんが、恐怖の対象と共にあっても快適に感じるになり、あらゆる生物のうちのひとつに過ぎないと受け入れることができるようになれば、その恐怖心が弱まります。
Image: Tomsickova Tatyana/Shutterstock.com
Source: Anxiety and Depression Association of America, APM Podcasts
Michelle Woo – Lifehacker US[原文]
(訳:的野裕子)
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