微表情から察する心の病 “仕事ができない”とされる人たちの表情には要注意 « ハーバービジネスオンライン

心を病む兆候は普段の表情に表れる。身近な人の表情をよく観察しよう

 こんにちは。微表情研究者の清水建二です。

 本日のテーマは、微表情から心の病のサインを察することが出来るか? です。

 結論から言えば、現状、心の病になる可能性を診断することは難しいものの、声かけのきっかけや第二次スクリーニングの判断材料になり得る、と考えられます。

 表情・微表情と心の病との関係について様々な研究があります。例えば、心の病に罹っている患者の表情に左右非対称の表情が生じたり、鼻から上の表情筋が動かなかったり、自殺願望を隠している入院患者の表情に悲しみの微表情が生じるということがいくつかの研究から報告されています。

 また重度のうつ病患者は悲しみ・嫌悪表情を多く見せ、そう病患者は「本心からの笑顔」も「本心でない笑顔」も多く見せ、怒り・嫌悪・悲しみ表情はあまり見せない、統合失調症患者は恐怖表情を多く見せる、こうしたことも患者の表情研究からわかっています。

 しかしこれらの研究は、すでに病気の人はどんな表情をするのか・すでに病気の人をどうするか、という問題を扱っています。

 表情・微表情と心の病に関する諸研究のアプローチは基本的にこのパターンであり、将来の心の病を予測する体系的な表情研究は筆者の知る限り皆無です。

 それでは表情や微表情観察のスキルを心の病を防止するために利用するにはどうしたらよいでしょうか?

◆カギとなるのは自尊心にまつわる表情

 心理学の知見と自身の実体験から「受け皿のない常習的な嫌悪と軽蔑の微表情は要注意」と考えています。

 嫌悪は拒絶です。自分にとって有害なものを受け入れたくないという感情です。軽蔑は優越感です。自分が他者より優れているという感情です。

 嫌悪と軽蔑は私たちが自尊心を保つ上でなくてはならない感情ですが、それが自身の能力との関わりにおいて度を過ぎると心に問題を引き起こすのではないかと考えられます。

 例えば、職場で「能力のある人」が、周りの意見に対して嫌悪や軽蔑を抱き、意見を一切受け入れず、仕事を自分の思うように進めるとします。

 自分勝手な人ですが、能力があるため仕事の成果は高く、結果的に周りからの評価も高まります。周りは「あの人は人の意見は聞かないけど結果は出すから、あの人の行動や意見は認める価値あるな。」と思うわけです。こうした場合、この人物の嫌悪と軽蔑は周りに受け入れられているわけです。

 一方で「能力のない人」が、自分の意見と周りの意見が異なるとき、嫌悪と軽蔑を抱くとします。

 しかし、これまで成果を出してきていない以上、自分の意見は周りに聞き入れてもらえません。そうすると「能力のない人」は意に反して、自らの仕事や行動パターンを周りの意見に合うように変えなくてはいけなくなります。

 こうした場合、この人物の嫌悪と軽蔑は周りに受け入れられていないわけです。この状態が常習的に続けば、自尊心が満たされない状態が続きます。これは大きなストレスです。このストレスが積もり続ければ、心の病につながり得ると考えられます。

 ずいぶん前に働いていたアルバイト先の社員さんの話です。アルバイトの私の目から見ていても、その社員さんはお世辞にも仕事が出来るとは思えませんでした。

 その社員さんが、周りから指示やアドバイスをされているとき、愛想笑いを浮かべながら嫌悪と軽蔑の微表情を本当によく生じさせていました。本当に周りからの意見や指示を嫌々受け入れているのだなと傍から見ていて感じていました。

 しばらくそうした状態が続いた後、その方は心の病を患い休職してしまいました。

 嫌悪・軽蔑に限らず、常習的に激しい感情を抑制したり、周りに感情が受け入れられない状態は心の負担になると考えられます。しかし、特に自尊心に関わる嫌悪・軽蔑感情は心の病に強く関連しているのではないかと思われます。

 職場環境や立場によって「能力のある・ない」の定義は変わり得るため、人に能力があるかないかを単純に決めることは出来ません。

 しかし意見が対立する場面や意見交換をする場面において目の前の「能力のない人」の表情に嫌悪や軽蔑の微表情が浮かんだら、取り敢えずはその人の意見に耳を傾ける、その意見がダメならばダメな理由を建設的に伝えていく、こうした日常的な職場コミュニケーションの継続が心の病の防止に寄与するのではないかと思います。

 またすでに「生きづらい」と感じている方々にとっては、自分が日々どれだけ嫌悪・軽蔑を抑制しているか、あるいは自尊心が満たされていないかを自問し、自分の能力を客観的に観て、職務能力の向上に磨きをかけたり、自分の能力を最も活かせる職場を見つける努力が大切なのだと思います。

参考文献
Paul Ekman, David Matsumoto, Wallance V. Friesen, “Facial Expression in Affective Disorders,” WHAT THE FACE REVEALS (2005):429-439.

【清水建二】
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

引用元

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まだらー('ー')/~~

 班目幸寛(まだらめゆきひろ) フェイスブック ページへ  友達申請を是非♪  1978年生まれの宮城県出身。  元々は建築科、専門学校卒業後、建築関連の仕事に就いたがが、当人がADHDの気があり(白に近いグレー)、その時の苦労を元にカウンセラーのキャリアをスタート。  カウンセリングのメインは発達障害のカウンセリングだったが、カウンセリングを行うにつれ幅が広がり『分かっているのにできない、やめれない事』等、不倫の恋、経営者の意思決定なども行う。(相談案内へ)  趣味はバイク・自転車・アウトドア・ミリタリーグッズ収集・国内外旅行でリスクティカー。 『昨日よりも若くて、スマート』が日々の目標。  愛読書はV,Eフランクル 放送大学 心理と教養卒業 / 臨床心理プログラム 大学院 選科履修

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