「堂々と嫌われろ」
問題先送り突破に必須のスキル本当に戦えるリーダーになるための7つの裏技 その4
2017/11/28
大企業のミドルリーダーには、通り一遍のビジネススクールでは学べない「人に影響力を与えたり、時には意のままに操るような、もっと泥臭いヒューマンスキル」が必要――。このように説いたビジネス書「ダークサイド・スキル」(木村尚敬著、日本経済新聞出版社)が話題だ。ダークサイド・スキルとはどんなスキルなのか、本書の一部を転載して紹介する。今回は7つのスキルの4つ目「堂々と嫌われろ」だ。
◇ ◇ ◇
「構造改革」という言葉には、工場閉鎖や人員削減などのネガティブなイメージがつきまとう。たしかにそういう面もなくはないのだが、もともとの意味は事業・組織の新陳代謝である。環境変化に対応して、古くなったものを改め、新しいものを伸ばしていくという小さな新陳代謝をきちんと積み重ねていくことが大事なのであって、何も日本経済新聞の一面を飾るような大規模な撤退戦やM&Aのような大胆な改革ばかりを指すことではない。むしろ普段の何気ない活動の中にも、たくさんの構造改革、つまり新陳代謝を必要としている事象が隠れている。
■親しみやすさと敬意は両立しない
小さな意思決定といっても、いまある状況に手を加えるとなると、あちらを立てればこちらが立たないケースの連続なので、リーダーたるもの、みんなから好かれるというのはどだい無理な話である。みんなのご機嫌をうかがう人気取りではこれからのリーダーは務まらない。
ところが、みんなでコンセンサスをつくりながら、ボトムアップで物事を決めてきた人は、5人いたら5人全員の意見を聞いて、うまく落としどころを探ることに長けているので、わりとみんなから好かれるタイプである。全員にいい顔をして、みんなから好かれることに慣れた人が、いきなり誰かを敵に回すような決断ができるかというと、むずかしい。「あの人嫌い」と言われても、「それがどうした」と開き直れる根性がないと、みんなの顔色をうかがって、結局、問題を先送りすることになる。
部下との距離感というのは大事で、塩野七生さんは『ローマ人の物語』で、親近感と敬意は両立しないと述べている。部下から好かれることと、上司として敬意を払われることは違うのだ。近づきすぎると、好かれるかもしれないが、お互いに緊張感がなくなり、いざというときに厳しいことを言えなくなる。だからといって離れすぎても、信頼関係が築けないから、自分の手足となって動いてもらうことはできない。
「好き」と「嫌い」をタテ軸、距離が「近い」のと「遠い」のをヨコ軸にとってマトリックスを描くと、昔のリーダーはだいたいみんなと仲良しで、「好き」というポジションの人が圧倒的であった。昇進して、上に行けば行くほど距離は遠くなっても、「好き」であることから外れることはなかった。嫌われ者はそもそも昇進できなかったのだ。
しかし、これまでのやり方を見直し、改革を推進するリーダーは、みんなから好かれているだけでは責任を果たせない。嫌われても、やるべきことをやることが求められている。そして、たとえ嫌われても、相手に恐れと敬意を抱かせれば、相手を動かすことができるのだ。
マキャベリは『君主論』の中で、人が誰かによって動かされるのは、その人に対する「恐れ」か、もしくは「好き」の感情であると述べている。その人のことが「好き」だということは相手の気持ちに依拠する要素が強いが、相手に恐れを感じさせるのは自分に寄る要素が強いことだ。
つまり、自分がコントロールできない部分に頼って人を動かそうとするよりも、自分がコントロールできる部分で人を動かすほうが理にかなっていると説いている(さらに、恐れと憎悪は別の感情であり、憎悪の念は必ずしっぺ返しをくうので、恐れと憎悪を混同するなとも説いている)。「畏敬の念」という言葉があるが、まさに相手が自分に対して抱く畏れと敬意のまざった感情だ。
経営共創基盤(IGIP)代表の冨山和彦はまさにこのタイプで、彼が来ると、その場の空気がピリッとする。下手なことを言うと見破られるし、なあなあでごまかせる相手ではないので、こちらも真剣勝負である。いい意味の緊張感がチームを強くする。
■毅然とした態度で在庫を燃やす
良品計画名誉顧問の松井忠三さんの在庫の話が強烈に印象に残っている。
松井さんが2001年に社長に就任したとき、良品計画は38億円もの赤字を計上した。これをなんとかしなければいけないという状況で、松井さんは象徴的なことをいくつかやっている。そのうちの一つが、売れ残りの在庫の山を全部かき集めて、社員の目の前で燃やしたのだ。在庫といっても、デザイナーにしてみたら、自分が手がけた作品を目の前で燃やされたわけだから、涙を流す人もいたそうだ。普通に考えれば、赤字でお金がない状況だし、セールをすればいくばくかの現金になる。それを一切認めず、中途半端なことはしないということを、在庫を燃やすことで社員全員にわからせた。
それまではマーチャンダイザーが欠品を嫌って多めに発注したりして、いろいろムダがあったのだが、そういうのはダメだ、認めないということを身をもって示したわけだ。しかも、一度ならず、二度同じことをした。それでようやく会社の体質が変わったのである。
結果的に、2000年に55億ぐらいあった在庫が、数年後には3分の1の17億円まで減った。荒療治だが、印象は強烈だ。嫌われる覚悟がなければ、とてもできないことである。
やはり、最大の抵抗勢力は現場なのだ。組織には慣性の法則が働いているので、行動様式はなかなか改められない。中途半端な働きかけでは変わらないし、太陽的なアプローチだけでもダメで、時には北風的な毅然とした態度で臨まないと変わらないということである。
なかには、叱ったとたんに離れていく部下もいる。しかし、そこで動揺してはいけない。ドキドキして、部下にすり寄ってしまうと、方針がブレてしまう。自分に自信を持って、泰然自若としていられるかどうかでリーダーの器が決まるのだ。
■状況に応じて手持ちのカードを使い分ける
一昔前のパワーマネジメントは、ブラック企業の代名詞でもあり現在では大ヒンシュクもののため、部下のやる気を引き出すには、とにかくほめて、笑顔で接し、やる気をうまく引き出しましょうということが言われてきた。しかし、それしかしないというのはボトムアップ時代の調整型のリーダーがすることで、トップダウンの改革派リーダーの振る舞いではない。
自分の意思を通すために、ダーク君に求められるのは、時に嫌われることを覚悟の上で、状況に応じて手持ちのカードを使い分けるスキルである。厳しく叱咤激励するカード、ほめて相手のやる気を引き出すカード、理詰めで議論を深めるカード、有無を言わさず押し切るカードなど、違う種類のカードを何枚も持っていて、どんな場面でどのカードを切るのか、うまく使い分けることが必要だ。
いつもニコニコしているカード一択では、部下に好かれるかもしれないが、たいていなめられる。この何枚ものカードを使い分けるためにも、部下との適切な距離感が大切なのだ。近すぎても遠すぎても、それは手持ちのカードの枚数を減らしてしまうことにつながる。
コマツの坂根正弘元会長はそのあたりのカードの使い分けが上手で、はねつけるときは徹底的にはねつけたと言われている。たとえば、社内にERP(統合基幹業務システム)を導入するとき、コマツ独自の付加価値を生み出すためにブラックボックス化して徹底的に自社仕様でつくり込む部分と、コスト重視で徹底的に標準化にこだわる部分とに切り分けた。現場の人は、いままでの仕事のやり方をできるだけ変えたくないから、独自仕様でつくり込むことを望みがちだが、競争領域でない部分については、問答無用で押し返したそうだ。
また、リストラは一回だけと決めて、その一回で膿を出し切った一方、ものづくりには徹底的にこだわり、「ダントツ経営」でコマツを真のグローバル企業へと脱皮させた。
リーダーには、そうした強さ、厳しさが求められる。それには、外からの評価を気にしているだけではダメで、自分の中にしっかりした軸を持つ必要がある。自分の中に軸があれば、反発する人がいても、「だからどうした」と乗り越えることができるのだ。
外の評価を気にする人は、敵をつくらないし、人当たりはいいかもしれないが、ここぞという勝負時には踏ん張れないのだ。
木村尚敬
経営共創基盤パートナー・取締役マネージングディレクター。慶大卒。ベンチャー企業経営の後、日本NCR、タワーズペリン、ADLにおいて事業戦略策定や経営管理体制の構築等の案件に従事。経営共創基盤参画後は製造業を中心に全社経営改革や事業強化など様々なステージにおける戦略策定と実行支援を推進。
ダークサイド・スキル 本当に戦えるリーダーになる7つの裏技
引用元
大企業のミドルリーダーには、通り一遍のビジネススクールでは学べない「人に影響力を与えたり、時には意のままに操るような、もっと泥臭いヒューマンスキル」が必要――。このように説いたビジネス書「ダークサイド・スキル」(木村尚敬著、日本経済新聞出…
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