■「ストーカー加害者への治療」
ストーカー対策と言えば「被害者」をどう守るかが中心になるが、その一方で「加害者」対策も進められている。警察庁で今月13日、ストーカーの加害者に精神科を受診させるよう、警察と医療機関などの連携強化を図る会議が開かれた。
警察庁は今年度から、必要な加害者には刑期を務め終えた後なども継続して精神科の受診を促す取り組みを始めている。今回は、全国から警察と精神科医療の専門家など約80人が参加した。
■再発率が高いストーカー行為
なぜ、加害者治療に着目するのか。実は、ストーカー行為は再発率が高い。警察庁によると、文書による警告を受けた人の約1割が1年以内にストーカー行為を繰り返したというデータがある。
なぜ、繰り返すことが多いのか。警察庁の会議に出席した精神科医で男女問題解決支援センター・福井裕輝代表理事は、次のように語る。
「相手に対する『恨みの中毒』。恨みは簡単におさまるわけではない。恨みの感情はどこかにあっても、行動をやめるにはどうすればいいかというのがスタート」
つまり、ストーカー行為を繰り返してしまう人というのは、恨みの感情に突き動かされて行動してしまい、コントロールが利かなくなるという状態にある。そのため、警察の刑罰だけでは十分ではないということだ。
そこで行動をコントロールできるように、考え方を変える治療が必要となる。
■加害者への治療、どうやって?
ストーカー加害者への治療やカウンセリングは実際、どのように行われているのか。今月11日、横浜市NPO法人「ステップ」が行っているカウンセリングを取材した。
カウンセリングには、ストーカーやDV(=ドメスティックバイオレンス)の加害者10人が集まった。
ストーカー加害者の女性「相手に裏切られた。理解してもらえない。(脅迫したということ?)脅迫ですね」
ストーカー加害者の男性「(家を出た妻を)徹底的に捜してやると。その時はもう殺してやろうと思った。GPSの機械を購入しようとか、ヤクザに相談して捜してもらおうとか」
男性は、妻が家を飛び出した時はストーカー行為に走ったということだが、約1年間のカウンセリングで、今では相手の気持ちを考えられるようになったという。
カウンセラー「さぁ皆さん。どう変えますか、この思考を」
ストーカー加害者の男性「相手が最善の選択をしたんだと思った。相手を気遣えるとはどういうことか、良い習慣の行動を得ることができた」
このようにディスカッションを通して考え方を変え、感情をコントロール出来るようにする。
――実際、加害者への治療は、広がっているのか。
今回のポイントは「受診に結びつける」。今年度から始まった警察と精神科医療との連携だが、去年4月から12月までに、警察が治療やカウンセリングの受診を働きかけた加害者のうち、実際に受診したのは25%のみという結果で、治療を拒否した人の割合は全体の約60%にも上った。
受診率が上がらない理由の1つには「治療費を自己負担しなければならない」ということがあり、1回に約1万円かかる治療もある。そのため、治療が続けば高額になってしまう。
また、そもそも精神科を受診するかどうかは加害者本人に任せられているので、加害者が「自分は病気ではない」と受診を拒否するケースが多いという。
加害者と一番多くの時間接するのは警察なので、警察がしっかりと加害者について調べ、精神科の受診につなげていくことが課題だろう。
■「ストーカー加害者への治療」 ストーカー対策と言えば「被害者」をどう守るかが中心になるが、その一方で「加害者」対策も進められている。警察庁で今月13日、ストーカーの加害者に精神科を受診させるよう、警察と医療機関などの連携強化を図る会議が開かれた。 警察庁は今年度から、必要な加害者には刑期を務め終えた後...
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