社会的孤独は疾患リスクを高めることが研究で示唆される
あなたは、「皆でワイワイ過ごすのが好きな人」と「一人で自分の時間を満喫するのが好きな人」のどちらに該当するだろうか。「どちらも当てはまる」と回答する人や、「時と場合による」という人もいるだろう。ただ、いつも「独り」でいるのはあまりよろしくないかもしれない。
海外のさまざまなニュースを紹介する「MailOnline」にこのほど掲載されたコラムによると、孤独は心臓病や高血圧などの健康障害を引き起こす可能性があるかもしれないという。孤独は人間の細胞にとって有害で、心臓病のリスクが高まると科学者たちは警告している。
人間は社会的動物と言える。友人に囲まれたり、個人的な経験を分かち合えたりできる仲間との関係を、われわれは切望している。実際、仲間の存在が生存にとってカギとなりうるのだ。その逆もまたしかり。生き残るために仲間が必要だというのであれば、社会的に隔離されているような状況は体にとって害となりかねない。
「社会的孤独」によってストレスを感じると、私たちの体はエピネフリンとコルチゾールというホルモンを放出。これらのホルモンが血流に入ると、炎症やウイルス感染症への反応に影響をおよぼす遺伝的変化を活性化させるという。
UCLAの遺伝学研究者で、孤独感が健康に与える影響を研究しているスティーブ・コール博士は「孤独感が人の身体面・精神面の健康にどれだけ深刻な影響を及ぼすかは、これまではっきりとわかっていなかった」と語る。
孤独は気分障害やうつ病の原因となるだけではなく、心臓病や高血圧、免疫機能障害、神経系障害にもつながる。2015年には、「実際に社会的孤独である、もしくはそう自覚している人たちは早死にするリスクが26%も高まる」とする研究が報告されているとのこと。
孤独が細胞レベルに与える影響の研究も進んでいる。2007年、コール博士とその研究チームは、恒常的に孤独な人の細胞がそうでない人の細胞と異なっていることを発見。特に恒常的に孤独な人の白血球細胞は「脅威の状態」に陥っているように見えたそうで、孤独でない人と比べて2つの大きな相違があったとしている。
1つ目は、炎症に反応する遺伝子がずっと「オン」のままになっている点。炎症が慢性的に起こるとアテローム性動脈硬化や心血管疾患、神経変性疾患、および転移性ガンなどの温床になるとコール博士は指摘する。2つ目の相違点は、ウイルス感染症を防ぐ遺伝子の活動を抑制してしまうことだ。
「身体はストレスに反応するのと同じように孤独にも反応する」とコール博士は語る。慢性的な孤独感に対する私たちの体の反応は、貧しい食生活や睡眠不足などといった慢性的なストレス源に対する反応とそんなに大きく変わらないとのこと。孤独は水面下で流行しており、不安障害やうつ病よりも疾病を引き起こす原因だとコール博士は考えている。
※写真と本文は関係ありません
○記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)
米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。
(杉田米行)
引用元
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