スクールカウンセラー(SC)という職種を知っている人は多いと思います。実際にカウンセリングを受けた子どもや保護者自身もいることでしょう。しかし、ほとんどのSCが非常勤であることなどもあって、その仕事の中身をきちんと知っている人は意外と少ないと思われます。文部科学省がまとめた2015(平成27)年度のSC実践活動事例集から、その仕事の内容をのぞいてみましょう。
保護者や教員も相談や助言の対象に
SCは、1995(平成7)年度に文部省(当時)が、都道府県への活用調査研究委託事業として開始したのが始まりです。2001(平成13)年度には文科省の補助事業に格上げされ、人件費の3分の1を国が補助する仕組みとなり、全国に広がり始めました。
SCは、臨床心理士や精神科医など心の専門家で、いじめや不登校など問題行動のカウンセリング、発達障害などの支援、事件・事故や災害などの際の心のケアなどを担っており、現在では学校になくてはならない存在となっています。
文科省は、2019(平成31)年度までに、すべての公立小中学校にSCを配置するという目標を掲げています。ではSCは、どんな仕事をしているのでしょうか。
たとえば、ある小学4年生の男子は落ち着きがなく、しかも体にあざができているなど、家庭での虐待が疑われました。担任はSCに依頼し、母親に相談の場を設けたいと申し出て、母親に対するカウンセリングを開始。母親と担任教員の話から、男児に発達障害の傾向があることを確認しました。そして母親による虐待は、言うことを聞かない男子に対する行き過ぎたしつけだったことがわかりました。SCは、母親に発達障害の子どもへの対応の仕方を助言すると同時に、学校も発達障害への対応を始め、男子をめぐる状況は少しずつ改善されていったそうです。
不安定な身分の解消、専門家の確保など課題
中学3年生女子の例では、不登校になったものの、保護者が学校に強い不信感を抱いていたことから、解決の糸口がつかめませんでした。そこでSCが保護者と担任との面談に同席し、保護者の意見を傾聴することに努めました。さらに、保護者に対しては、不登校への対応を客観的な立場から助言し、担任教員に対しても、生徒との接し方と保護者との連携の仕方を助言しました。保護者の意見を傾聴したことにより、学校に対する保護者の抵抗感が薄れた他、専門的見地からの助言を担任教員が実践したことで、学校と家庭の協力する意識が高まったということです。
このように、SCの対象は子どもだけにとどまらず、保護者や教員にも及んでいます。しかし、非常勤という不安定な身分であること、SCの増加とともに専門家の確保が難しくなっていることなどが課題となっています。
文科省は、将来的にはSCを常勤職として全国の学校に配置したいという意向を持っています。学校でよりよい環境をつくるためにも、その実現が早期に望まれるところです。※平成27年度スクールカウンセラー実践活動事例集
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1379093.htm(筆者:斎藤剛史)
引用元
http://benesse.jp/kyouiku/201612/20161222-1.html
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