PTSDではない、似て非なる「ASD」
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執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
つらく苦しい体験によりトラウマ(心の傷)を負った人が、その後もトラウマの記憶に悩まされることは珍しくありません。
そうした症状を表す「PTSD」という言葉を、報道などで耳にしたこともあると思います。
もうひとつ、PTSDとよく似た障害に「ASD(エー・エス・ディー、急性ストレス障害)」があります。今回はこのASDについて解説します。
急性の経過をたどるASD
PTSDが比較的長期にわたって、言わば慢性的に見られる症状であるのに対し、ASDは「急性ストレス障害」という名称からもわかるように急性の経過をたどる点が特徴です。
トラウマを負った体験から4週間以内に精神症状が現れ、症状の持続期間は2日以上4週間以内とされています。
ASDについてはまだ大規模な調査が行われていないため、正確な有病率(人口に対する患者の割合)はわかっていません。
ただし、がんや急性心筋梗塞などの身体疾患患者で2〜4%、自然災害や交通事故の被災者で7〜16%。暴力の被害者で19〜24%の割合で、ASDの発症が認められたという報告があります。
ASDの診断
ASDの診断基準はPTSDとほぼ同じです。
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