ASKA、清原和博、高知東生、高樹沙耶…薬物依存は「厳罰」でなく「医療モデル」で治療を|健康・医療情報でQOLを高める~ヘルスプレス/HEALTH PRESS

【インタビュー「薬物依存は慢性疾患である」第1回:松本俊彦(国立精神・神経医療研究センター・薬物依存研究部部長)】

ASKA、清原和博、高知東生、高樹沙耶…薬物依存は「厳罰」でなく「医療モデル」で治療を

2016.10.28

薬物依存は厳罰主義ではなく「医療モデル」で治療すべき(shutterstock.com)

ASKAや清原和博、高知東生など、芸能界やスポーツ界にも広まる覚せい剤汚染――。先日も、女優の高樹沙耶が大麻所持の疑いで逮捕され、薬物問題の裾野の広さがあらためて明らかになった。

一向に少なくならない再犯者の数は、厳罰による取り締まりだけでは再使用の歯止めにはならないという現実を表している。薬物依存症者への対策はどうあるべきか。私たちは薬物という問題にどう向きあえばいいのか。

国立精神・神経医療研究センター・薬物依存研究部部長で、薬物問題の第一人者である松本俊彦医師に、薬物対策のあるべき形について聞いた。

薬物依存は「医療モデル」で治療するべき

――松本先生は、覚せい剤などの薬物依存を<慢性疾患>として捉え、「厳罰主義」ではなく、「医療モデル」によって治療すべきと考えているそうですが、その根拠と考え方について聞かせてください。

日本の刑務所が現在過剰収容になっている最大の理由は、覚せい剤取締法事犯者が大量に収容されていることです。しかも、そのほとんどが、再犯、再々犯など、何度も覚せい剤で捕まっている人たち。

なぜ、懲りずに同じ罪を犯すのか? それは、覚せい剤依存症は医学的な障害、つまり健康問題であって、厳しい刑で罰するだけでは再使用を防ぐことができないのではないか、と考えた問題意識が出発点です。

実際に、私が刑務所で覚せい剤の累犯者に話を聞くと、「覚せい剤が原因で家族や友人、あるいは組織の親分やアニキには何度も叱られたり殴られたりしている。だけどそうやってヤキを入れられたあとには、余計に覚せい剤をやりたくなった」というんです。

そういうふうに、シラフでいられなくなって薬を使ってしまう状態は、犯罪というより「慢性疾患」に関する健康問題であると考えた方が妥当なのです。

覚せい剤依存というのは病気であって、病気である以上、刑罰や叱責による歯止めには限界がある。だから、医療者は患者として相対し、できることをやっていくことの方が大事なんです。

ただ、病気として捉えるというサイエンスの考え方に対し、厳しく罰するべきであるというイデオロギーの部分で納得できないという方はたくさんいらっしゃいます。

プログラム修了後の再犯率は21%、刑務所に行った人の再犯率は78%

――松本先生の主張は「刑罰を緩くする代わりに医療を手厚くする」ということなのでしょうか?

刑罰に関しては刑法を変えなければならないですし、日本でただちにそうするべきだと言うつもりもありません。

一時的に身柄を拘束され、物理的に薬物から離れ、「しらふ」の頭でこれからの生き方を考える時間が必要な人もいます。ただ、それと薬物依存摂からの回復とは別の問題です。

ただ、薬物には厳しいアメリカですら、1980年代からドラッグコートという制度が行なわれています。

これは薬物の使用や所持犯に対して、裁判所が刑務所に行くか治療施設に行くかを選ばせるというものです。治療を選んだら自宅に戻って裁判所が指定した治療施設に自宅から通うという仕組みです。

治療を選んだドラッグコートの卒業生の、プログラム修了後3年以内の再犯率は21%。一方、刑務所に行った人の出所後3年以内の再犯率は78%であったと報告する研究もあります。

――しかし、厳しく罰せられなくなると、「バレても大したことはない」と思って薬物に手を出す人が増えませんか?

日本の状況を見てみると、覚せい剤で捕まった人が、再び薬に手を出すのでいちばん多いのは、刑務所を出た直後、それから保護観察が終わった直後や精神科病院を退院した直後といった、<隔離や法的な拘束が終わった直後>です。

だからといって、一生刑務所に入れたり、監視下に置くわけにはいきませんよね。だから解放するときに再使用のリスクを少なくする方法をまず考えないといけません。

そこで2016年6月から始まったのが、刑の一部執行猶予制度。たとえば、懲役3年と判決が下された場合、刑期の終わりの1年や半年といった期間を出所して過ごすかわりに、2年間の保護観察を設けて、地域での治療を受けるというものです。

刑務所を出てからでも地域でのケアが続くというのは大きな前進ですが、問題は保護観察が終了したとき。その後も社会とつながっていられるように、相談できる期間や場所を作っておくことが大事だと、私は考えます。

薬物依存症の治療を受けられる場所が少ない

――再使用をしないための地域ケアは、どのようなものがいいのでしょうか?

医療に限らず、「ダルク」などのリハビリ施設や自助グループでもいいし、公的な保健福祉機関の相談員でもいいのです。いずれにせよ、薬物依存症の治療においては、とにかく薬物について率直に話せる援助者との関係性が長く続くほど、再発率が低いことが分かっています。

ところが、薬物依存症の治療を受けられる場所が非常に少ない。その状況はいまでも続いています。まずは、これを変えていかなければならないと思います。
(取材=ライター・精神保健福祉士・里中高志)
松本俊彦(まつもと としひこ)
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長。1993年、佐賀医科大学医学部卒業後、神奈川県立精神医療センター、横浜市立大学医学部附属病院精神科などを経て、2015年より現職。日本アルコール・薬物医学会理事、日本精神科救急学会理事、日本社会精神医学会。著書に『薬物依存の理解と援助』(金剛出版、2005)、『自傷行為の理解と援助』(日本評論社、2009)、『自分を傷つけずにいられない』(講談社、2015)、『よくわかるSMARPP─あなたにもできる薬物依存者支援』(金剛出版、2016)などがある。

引用元:

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 班目幸寛(まだらめゆきひろ) フェイスブック ページへ  友達申請を是非♪  1978年生まれの宮城県出身。  元々は建築科、専門学校卒業後、建築関連の仕事に就いたがが、当人がADHDの気があり(白に近いグレー)、その時の苦労を元にカウンセラーのキャリアをスタート。  カウンセリングのメインは発達障害のカウンセリングだったが、カウンセリングを行うにつれ幅が広がり『分かっているのにできない、やめれない事』等、不倫の恋、経営者の意思決定なども行う。(相談案内へ)  趣味はバイク・自転車・アウトドア・ミリタリーグッズ収集・国内外旅行でリスクティカー。 『昨日よりも若くて、スマート』が日々の目標。  愛読書はV,Eフランクル 放送大学 心理と教養卒業 / 臨床心理プログラム 大学院 選科履修