2017/03/08 07:00
(1)「遅刻が多くなる」「誘いを断る」「身なりが乱れる」
心が疲れているサインとは? |
激務や過労が社会問題となっている昨今。「不安で眠れない」「休みの日も仕事のことが頭から離れない」など疲れの兆候があっても、責任感から耐えようとしてしまう人もいる。そして出社ができなくなり、治療のために休職を余儀なくされるケースも少なくない。
では職場で、どのような心身の異変を感じたら、休むべきなのだろうか。今回は、精神科の高木希奈医師に、心が疲れているときの症状と対処法などについてうかがった。
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心と体は密接に関連しています。心に不調をきたすと、だるさや肩こり、頭痛、吐き気、痛みなど体にも不調が出てきます。逆に、日常生活で疲れがたまったり体の不調があったりすると、気分まで落ち込むなど精神的にも不安定になるものです。
心が疲れているサインとして、主に次のような心身の不調が現れます。今の心の状態をチェックしてみましょう。
□遅刻が多くなる
□夜眠れないため、会議中に居眠りをするなど仕事中も眠気がある
□いつもと比べると元気がなさそうに見える
□身体のだるさがあり、ちょっとしたことでもすぐに疲れてしまう
□集中力や注意力の低下があり、ケアレスミスが増える
□意欲が出なく、仕事の能率が下がる
□(上記のような理由で)仕事に支障をきたすことから、自分はダメな人間だと思い込んだり、自分に自信がなくなったりする
□気分が落ち込んで、全てを悲観的に考えてしまう
□人付き合いがおっくうになり、職場の飲み会などイベントに誘われても断ってしまう
□身だしなみに気を使えなくなり、身なりが乱れるようになる
□食欲が落ちて吐き気がするので、あまり食事が喉を通らない
□頭痛や胃痛、肩こりなど、体の不調や痛みが出てくる
これらの項目に当てはまる人でも、最初のうちは、なんとか会社には行けているかもしれません。しかし症状がひどくなると、会社に行くこともできなくなったり、身の回りのことすらできずに日常生活に支障が出たりする可能性もあります。
どちらかというと、女性より男性の方がうつ病にはなりやすいと考えられています。それは、右脳と左脳をつなぐ「脳梁(のうりょう)」の幅が、女性は男性の1.5倍も広いためです。脳梁が広い女性の脳は、左右の脳をバランスよく機能させて一度に多量の情報交換を行い、同時進行で複数のことをこなせるのに対し、脳梁が狭い男性の脳は、1つの物事に集中して取り組むのに向いています。
ですから、女性は仕事をこなしながら、恋愛も友人関係も子育ても家事も全部同時進行で進められます。一方の男性は、仕事が忙しくなると、仕事に集中するあまり他のことがおろそかになる傾向に。さらに、女性はおしゃべりなどでストレス発散をするのが上手なのに対し、男性は建前やプライドの世界で生きているので、愚痴を言いづらく自分の中にため込んでしまいがちです。
また、年齢とかけ合わせた傾向では、うつ病は中高年の男性に多いと言われています。若年でうつ症状が出現している方は、双極性障害など別の疾患の可能性が高いです。
2017/03/08 07:00
(2)仕事量が多いときは上司に訴える
まずは、無理をしないでゆっくり十分な休養をとること。特に、十分な睡眠をとることは一番重要です。休みの日は無理して予定を入れずに家でのんびりと過ごしたり、自分の好きなことをしてリフレッシュしたり、ストレス発散を心がけましょう。
仕事量が多すぎる場合や仕事内容がきつい場合は、上司や同僚に相談して、量を減らしてもらう、内容を簡単なものにしてもらうなど、仕事の調整をしてもらいましょう。まだ症状が軽い場合は、それだけで改善することもあります。
また周りの同僚や、管理職の方は部下にも気を使ってあげてください。私たち精神科医は具体的な症状の訴えだけでなく、その人の雰囲気や話し方、表情などからも、うつ病かどうかを判断します。ケアレスミスやボーッとしている時間が増えたり、いつもと違う雰囲気を感じたりしたら、うつ状態になりかけている可能性があります。早めに休みを取らせる、仕事量を減らすといった配慮をしてあげてください。
もし部下がうつ病で休職すれば、管理職の方は自身の管理能力を問われることにもなってしまいます。部下だけでなく、同僚がもし休職するようなことになってしまったら、自分の仕事量も増えて負担が大きくなるので、そうなる前に、お互いに助け合っていきましょう。
心身ともに健やかに保つには、体の内側と外側からケアしていくことが大切です。まず体の内側からケアするには、バランスのよい食事を心がけて、規則正しい生活を送ること。ストレスの原因を解消できるのが一番よいのですが、人間関係や仕事の問題はなかなかすぐには無くなりません。自分の好きなことでストレス発散をして、メンタルケアをすることが大切です。
そして、エステやマッサージ、整体、ゆっくり入浴してリラックスする、軽い運動など、体の外側からケアしていくことも大事です。
症状が出現してから対処するまでの時間が長くなればなるほど、重症になってしまいます。治療にも時間がかかったり、治りづらくなってしまったりもします。そうなる前に一度、精神科の病院やクリニックを受診した方がよいでしょう。あまり我慢せずに、早めの受診をお勧めします。症状が悪化してしまった場合は、お薬を併用した方が早くよくなりますので、お医者さんとよく相談してみてください。
※写真と本文は関係ありません
取材協力: 高木希奈(タカギ・キナ)
精神保健指定医、日本精神神経学会認定専門医、日本精神神経学会認定指導医、日本医師会認定産業医。
長野県出身。聖マリアンナ医科大学卒業。現在は、精神科単科の病院で精神科救急を中心に急性期治療にあたっている。また、産業医として企業にも勤務経験あり。
著書に『間取りの恋愛心理学』(三五館)、『あなたの周りの身近な狂気』(セブン&アイ出版)、『精神科女医が本気で考えた 心と体を満足させるセックス』(徳間書店)、電子書籍『女医が教える飽きないエッチ』(App Store、Kindle)など。趣味は、海外旅行とスキューバダイビング。オフィシャルブログはこちら。
引用元
http://s.news.mynavi.jp/articles/2017/03/08/kokoro/