妻はなぜ、夫の愛人に会いに行くのか
2017/02/27 23:15
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興味本位で会ってもショックを受ける
妻たちは夫の浮気を疑ったり証拠を握ったりしたとき、まずはショックを受ける。その後、怒りがわいてくるのが一般的なのだが、この怒りをどこに向けるかが問題。長年連れ添った夫をかばいたいのか、あるいは自分のプライドを守りたいのか、本来なら夫に向けるべき怒りを、相手の女性に向けてしまいがちなのだ。
「相手の女がうちの夫を誘惑したに違いない」
「どんな女か見てやりたい」
「できれば文句のひとつも言ってやりたい」そんな波立つ感情に背中を押されて、出かけて行ってしまう。もちろん、多くの場合、相手の女性はおののき萎縮する。謝罪の言葉のひとつも口にするし、「別れます」とも言う。
では妻が「勝ってすっきり」かというと、それがそうではないのだ。
「相手は私より10歳以上年下のきれいな人でね。彼女と目を合わせるたびに、『私を老いた女だとバカにしている』と思わされた。本当はどう感じていたかわからないけど、どうしてもそう思っちゃうんですよ。夫と彼女の仲は終わりましたけど、いまだに彼女の顔が蘇ることがあって、そのたびにまた怒りがこみあげてきます」
2年前に夫の彼女に会いに行ったヨウコさん(48歳・仮名=以下同)はそう語る。
一方、相手が年上なら「勝った」気持ちになれるのだろうか。
3年前、夫の携帯から浮気を確信したマリさん(40歳)は、彼女に連絡をとり、ひとりで彼女の家に乗り込んでいった。
「夫が私より8歳年上。相手の女はその夫より5歳年上。私より一回り以上、年上だった。『大人なら分別もちなさいよ』って言ってやろうと思って会いに行ったんだけど、逆にものすごく落ち込みました。確かに年はとっていたけど、体の奥からにじみ出るような落ち着きというか、ある種のすごみみたいなものを感じさせられてしまって……。『申し訳ありませんでした』と手をついて謝られたけど、ちっとも悪いとは思ってなかったはず。むしろ、『夫をつなぎとめておけないあなたがいけないんじゃない?』と言われているかのようだった。相手のほうが、女として一枚も二枚も上手でしたね」
つまりは、相手が年下であれ年上であれ、夫の恋愛相手に会いに行った妻の多くは、むしろ精神的にへこんでしまうのだ。それなのに、なぜ会いに行くのだろう。愛人が妻に会おうとするケースはほとんどないのに。
相手への興味と、自分の立場を確認するため?
もちろん、いちばんいけないのは自分の夫だ。そんなことは妻たちも重々、わかっている。だが、夫を責めるより前に、あるいは責めた後に、「相手の女はどういう人なのだろう」という強烈な興味と関心を止めることができない。もちろん、それはすさまじい怒りに裏打ちされているので、行動を起こすにはじゅうぶんなのだ。
中には、「私が妻なんだから」と立場を誇示しに行くケースもある。法律的には訴えられる可能性もあるので、多くの愛人たちは萎縮する。夫と愛人の関係がとぎれることも多い。その後の夫婦がどうやって家庭生活を再構築していくかは別として、とりあえず不倫騒動は一件落着ではある。
ところが実際に会いに行って、「実は妻という立場なんて脆いものだ」と痛感させられる場合も、多々出てきてしまう。
「相手の女性は独身。アパートをつきとめて会いに行きました。妻の目を盗んで、泥棒猫みたいな真似をするなと言ってやりたかった。どんな女なのか、すべて自分の目で確かめたい、真実を知りたい気持ちもあった。でも、隣の部屋のベッドが見えたとたん、ここで目の前の女が夫と寝たのかと思うと急に怒りで体が震えました。その勢いで彼女を殴りつけてしまって。そこへ、何かを察したのか、やってきた夫と鉢合わせ。夫が彼女の前に立ったとき、ああ、もう私たちはダメなんだと思った」
カヨさん(39歳)は、3年前の「事件」を、そう述懐する。暴力をふるわれている側をかばうのは当然なのだが、カヨさんには、夫が自分ではなく愛人を守ろうとしたように見えたのだという。
「私を制しようとしたなら、まだ納得できたんですけどね。興奮しているようで、そういうときの女は頭の一点に冷静さを残している。少なくとも私はそうでした。だからそれ以来、夫は子どもたちの父親と位置づけて暮らしています。子どもたちが成人したら離婚するつもり。あと8年の辛抱です」
女としての魅力という「価値」で敗北感を味わうと、妻は夫に対して「女」を封印する。そこから「単なる同居人」と見るようになるのだ。
夫の不倫を疑ったとき、あるいは証拠を見つけてしまったとき、どういう対応をとるかはさまざまだろう。妻の性格にもよるし、それまでの夫婦の関係にもよる。だから、正解はない。
ただ、まずは夫と対峙するのが先だろう。結婚生活を続けていきたいなら、相手の女とは、なるべく会わないほうがいいのではないか。それは「真実から目を背ける」のではなく、「自分を守り、無用な争いを引き起こさないため」でもある。
引用元
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班目幸寛(まだらー)
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