うつ病の友への接し方…香山リカ : 大手小町 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

小町拝見

うつ病の友への接し方…香山リカ

 講演のあとの質疑応答でよく出る質問に、「うつ病の友人にどう接すればよいのか」というものがある。うつ病になった同僚からの長電話に悩まされている、というトピもあった。

 もちろん個々の例で違うのだが、基本は「他人にできることには限界があることを忘れない」だ。いきなり突き放した言い方だが、周りに心の病を患っている友人がいると、親切な人ほど「私が助けてあげたい」と思うが、それは間違いだ。

 「いつでも相談して」などと言うと、最初は相手も感謝することだろう。しかし、そのうち相手は過剰に期待して依存するようになり、回復が遅れる場合もある。話を聴く側も、「忙しい中、時間を割いてるのに」と不満を抱き、夜中や休日などにも連絡が来て疲れを感じたり、相手のうつの気分に巻き込まれて自分まで気がめいったりすることもあるだろう。そうなったらまさに“とも倒れ”だ。

 それを防ぐためにはどうすればいいのだろう。まず大切なのは、うつ病の友人の話を聴くこと自体はよいが、際限なく時間やエネルギーを使わないことだ。電話なら「1回20分」などと決めておく。それをすぎたら、「私もやることあるからまた来週ね」などと具体的に指定してなるべく話を打ち切る。また、深く理解しようとしすぎると聴く側もヘトヘトになるので、「ふーん、そんなこともあるのね」というちょっと距離を置いた姿勢を保つ。

 もしそれがむずかしそうなら、思いきって「私、うつ病のことはよくわからないから、あなたが落ち着いてから話そうね」と伝えるのはどうか。一見、冷たい態度だが、決して見捨てるのではなく、友情は変わらないことを伝えればよい。自分をまず守らなければ、友人だって守れないのだ。

香山リカ(かやま・りか)
 精神科医、立教大教授。1960年、北海道生まれ。豊富な臨床経験を生かし、新聞やラジオ、テレビなど様々なメディアで、現代人の心の問題について発言している。

2017年02月06日 05時20分Copyright © The Yomiuri Shimbun

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