オズボーン氏が続ける。
「センサー技術の進化も重要です。センサー技術が発展すると、これまで人間にしかできないとされていた認知能力を備えた機械がさまざまな分野で活躍できるようになるからです。たとえば、カタールの首都ドーハやブラジルのサンパウロ、中国の北京などでは、水道のパイプやポンプにセンサーを設置。センサーが水道管の漏れをチェックした結果、水漏れを40~50%削減することに成功しています。こうした機器の不具合を観察する作業員は必要でなくなるでしょう」
センサー技術がさらに普及すれば、患者の状況を観察する医療スタッフの仕事がいらなくなる可能性も出てくる。
また、街頭や歩道などにセンサーが張り巡らされ、音や映像を記録することによって、「警官の人数も減らせるかもしれない」とオズボーン氏は指摘する。
「人間は休憩や睡眠をとる必要があるので、観察が中断することがありますが、センサーは常に見張りができる。また、人間は集中力の低下や人それぞれに思考のバイアスがありますが、ビッグデータを分析するコンピューターにはそのようなデメリットがない。結果として、機械のほうが人間よりすぐれた仕事をする可能性すらあるわけです」
知識労働者が次々失業
こうしたビッグデータによる情報分析、センサーによる認識能力を組み合わせることで、人間並み、もしくはそれ以上の「判断力」を備えたコンピューターも出現し始めている。
たとえば米アップルのスマホは、人間が「東京の週末の天気は?」と話しかけると、それを認識し、実際の天気予報を画面上に映し出す。
米国では、コールセンター業務を人間に代わって行える音声応答システムも開発されており、これにより従来に比べ60~80%のコストが削減できるようになりつつあるともいう。
金融業界では、人間のトレーダーよりも大量かつ迅速に、コンピューターがプレスリリースや決算資料を分析し、それに基づいた投資判断を下すのが日常の風景となっている。
ウェブ上に顧客が情報を入力するだけで、コンピューターのファイナンシャル・アドバイザーが顧客それぞれにあった資産運用アドバイスを行うサービスもスタートし、人気を博しているというのだ。
「教育の現場では、無料でオンライン講義を受けられる『MOOCs』が急成長しています。そして、学生がディスカッションでどんなやり取りをするか、課題を勤勉にこなしているか、講義をきちんと視聴しているか、そして最終的にどれくらいの成績をおさめているか、などについての莫大なデータが集まり始めています。こうした情報を利用すれば、人間に代わってコンピューターの講師が、個々の学生に応じた講習や評価ができるようになるし、卒業後の就職適性も導き出すことができるようになります。その技術を人材採用に適用すれば、各企業の人事部の作業はいまよりずっと効率化できたりもするのです」(オズボーン氏)