米国で読み継がれる「お金の名著」3冊 財産を築く不変の考え方
「富む道」を学ぶ
岩田太郎
2018/04/07
米国では毎年、多くの「お金の名著」が多く出版される。時代や流行を敏感に反映した本が売れるのだが、一方で「読み継がれる名著」も多く存在する。
時代は変わっても、賢い投資や財産を築くための根本的な考え方は変わらないのだ。では、どのような著書が読み継がれているのか。3冊の「古典」を紹介しよう。
(1)バフェット氏も絶賛の『賢明なる投資家』
古典,名著
(画像=Webサイトより)
お金に関するバイブルと呼ばれる本には、変わらないテーマがある。「勤勉」「自己責任で運命を切り拓く」「成功の秘訣を簡単な法則に煮詰める」「一般人にも実行できる秘訣」「お金は悪ではない」など、基本的な心構えを教えるものが多い。
ベンジャミン・グレアム著の『賢明なる投資家』は、その代表格だ。戦後間もない1949年に初版が出たが、今も米国の投資家の愛読リストに必ず出てくる根強い人気を誇る。あの「投資の神様」ことウォーレン・バフェット氏も、この本の大ファンであることを隠さない。その人気の秘密は、どこにあるのだろうか。
この「バリュー投資の古典中の古典」には、「現在の株価が実際の価値を下回っているお得な株式を探すコツ」が詰め込まれている。最も大切な教えは、「高すぎる株価では買わない」という心構えである。だが、言うは易く行うは難し。相場がイケイケであれば、誰でも浮かれてしまい、実は収益性が低い銘柄や、値がピーク域に達した株に手を出したくなる。
バフェット氏も2008年、原油価格高騰の最中、割高になっていた米総合エネルギー大手コノコフィリップス株に大規模な投資をして、盛大にコケてしまったことがある。当時は、原油が上げ続けるように思えたが、その後暴落して大損を出すことになるのである。
だからこそバフェット氏は、「高すぎる株価では買わない」ための平常心を保つべく、『賢明なる投資家』をボロボロになるまで読んでいるのだ。投資のバイブルと称されるだけあって、投資に必要とされる自己鍛錬の方法や、熱狂の中で心の平安を保つ方法を教えてくれる。ロングセラーであることは、ある意味当然なのだ。
初心者からプロまで、誰でも学べる平易な内容で、バフェット氏は「投資に関する著書の中では、最良だ」と太鼓判を押す。日本語版も出されており、是非手に取りたい一冊だ。
(2)お金は善だ!『金持ち父さん 貧乏父さん』
古典,名著
(画像=Webサイトより)
古典中の古典である『賢明なる投資家』と並んで、米国で特に人気が高いのがハワイ育ちの日系4世であるロバート・キヨサキ(日本名は清崎徹)氏が1997年に著した『金持ち父さん 貧乏父さん』である。当初は自費出版の目立たない本であったが、ジワジワと人気が出てついに『ニューヨーク・タイムズ』紙のベストセラーにランクインしたという、伝説の一冊だ。すでに「古典」の部類に入っている。
キヨサキ氏の知り合いの父である「金持ち父さん」と、キヨサキ氏自身の父である「貧乏父さん」の考え方の違いを通して語られるメッセージは極めて単純明快だ。
貧乏父さんはなぜ、貧乏なのか。それは、キヨサキ氏の父親のように「金への執着は諸悪の根源だ」「金持ちは、困っている貧者を助けるためにより多くの税金を払うべきだ」が口癖となり、お金が寄って来ないし、逃げていくのである。
ところが、金持ち父さんは違う。お金に対して肯定的で積極的だ。「金がないことこそが悪の根源だ」「どうしたらお金をもうけられるかを考えろ」が口癖になっている。そのため、お金を引き寄せ、手元にとどめておけるのである。金持ち父さんが金持ちであることは、必然なのだ。
これは、方法論を教える『賢明なる投資家』を読む以前に、お金儲けをするために持つべき心構えを教える本だ。投資家になっても、お金に対して否定的な考えを持っていれば失敗するのは自明の理である。キヨサキ氏は、実際の投資手法以前に、自分が持っている基本的な考えをまず確認せよと説く。お金が貯まるも貯まらぬも、それを引き寄せる思考がすべてであるからだ。
事実、バフェット氏をはじめ成功した投資家たちは、みなお金に対して肯定的であり、攻撃的でさえある。その良し悪しはともかく、キヨサキ氏の著書が米国でベストセラーであり続けるのは、人生のタブーとも言える真理を「恥ずかしい」と隠すのではなく、開き直ってさらけ出したからだ。必読の書である。
(3)積極的思考が秘めるパワー『富を引き寄せる科学的法則』
古典,名著
(画像=Webサイトより)
米国の思想家であるウォレス・ワトルズが著した『富を引き寄せる科学的法則』は、1910年に初版が出て以来100年以上にわたって読み継がれる名著中の名著だ。
『賢明なる投資家』が投資の手法の基本的心構えを説き、『金持ち父さん 貧乏父さん』がお金に関する態度について教えるとすれば、『富を引き寄せる科学的法則』は、お金を増やすための自信、いや信仰の力を与えてくれる手引きだ。
米『Inc.』誌の書評は、「科学とは程遠い内容だが、何千という資産増殖セミナーに知的枠組みを提供してきた」と絶賛する。その核心は、現在の言葉で言うポジティブ・シンキング(積極的思考)である。現在出回っているポジティブ・シンキングのお金の本はほぼすべて、『富を引き寄せる科学的法則』にルーツを求めることができる。
ワトルズが読者に勧めるのは、自分への積極的な語りかけだ。「私には、金持ちになる権利がある」「私は、お金持ちになった自分を想像することができる」など、自己イメージの鮮明さ、決意と信念の固さで、読者にお金を引き寄せさせるのだ。頭の中のイメージは、現実化してゆく。
事実、ナポレオン・ヒル、ロバート・シュラー、アンソニー・ロビンズら富豪の多くは、自分が金持ちになっている姿を心の中で「先取り」して、実際に富を手に入れたことを告白している。自己イメージ訓練は現代心理学でも取り扱われる科学」でもある。
科学と宗教の境界が必ずしもはっきりしていないことを示唆する内容だ。明確なビジョンを持ち、決意と信念をもち、行動し続けることが富む道であり、それを宗教のように説くのが『富を引き寄せる科学的法則』、お金にまつわる罪悪感や恥の概念を払拭するのが『金持ち父さん 貧乏父さん』、実際の投資の戦いをいかに勝ち抜くかの具体的で基本的な方法論を教えるのが『賢明なる投資家』ということになる。
このように、米国の古典的な「お金の名著」には、名著たる根拠がある。米国人の成功者の思考の本質を教えてくれるからだ。「富」がどこから生まれるのか、どうすれば増えるのか、それはすべて「考え方」次第。その秘訣を、古典から学んでみるのはいかがだろうか。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)
引用元
https://zuuonline.com/archives/184421