春のメンタル不調 意識的な「緩み時間」でケアを|健康・医療|NIKKEI STYLE

春のメンタル不調 意識的な「緩み時間」でケアを
こちら「メンタル産業医」相談室(20)
日経Gooday

2018/3/5

過緊張になりがちなこの季節、意識的にリラックスできる時間を作りましょう。写真はイメージ=(c)Antonio Guillem-123RF
過緊張になりがちなこの季節、意識的にリラックスできる時間を作りましょう。写真はイメージ=(c)Antonio Guillem-123RF
日経Gooday(グッデイ)
 目に映る風景の明るさに春の訪れを感じる今日この頃、あなたの心と体はお元気でしょうか? こんにちは、精神科医・産業医の奥田弘美です。今回は、春のメンタルケアについて触れたいと思います。

 冬枯れした木々に、柔らかな新芽が一斉に芽吹き出す3月から4月にかけては、「木の芽時」と呼ばれます。実はこの「木の芽時」は、昔から精神科医の間では、メンタル状態が悪化する人が増える要注意時期として有名です。

 この時期、もともと何らかの精神疾患を患って通院している人が悪化するだけでなく、新規の患者さんも増えやすくなります。気持ちが落ち込み、やる気が起こらないといった抑うつ症状や、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めるといった睡眠障害のほか、不安や焦燥感が増し、感情が不安定になるといった症状を訴える人も少なくありません。メンタルだけではなく、体が重だるい、めまいがする、胃の調子が悪く食欲が落ち気味、腹痛や下痢、便秘がひどいといった体の症状を合併する人もいます。

■不調の原因は「変化」

 この「木の芽時の不調」の原因は、一言で言うと「変化」です。日本の春は、様々な変化が一気に起こるため、心身がその変化に対応できなくなると心や体の不調が発生してしまうのです。あらゆる変化が心身にとってストレス原因になるということは、既に第7回「『変化疲れ』が五月病の原因に 注意すべきはこんな人」と第8回「連休で疲れを残さないコツ 変化はストレスと考える」で詳しくご紹介しました。

 簡単にまとめますと、私たちは外界で何らかの変化が起こると、自律神経系を駆使してその変化になじもうとします。しかし変化が激し過ぎると、自律神経系が対応しきれなくなり、心身に病的症状が発生してしまうのです。

日本人に起こりやすい「春の変化」をざっと挙げてみましょう。まず、誰にも平等に発生する変化としては、外気温の変化が挙げられます。春先は三寒四温と呼ばれ気温が10度近く変化する日が続きます。また菜種梅雨(なたねづゆ)、春雨といった言葉があるように、気圧が不安定になって雨が降る日も多くなり、冬と比べて天気も変化しやすくなります。そのため日本人の誰もが自律神経系が疲労しやすい状態にあります。

春は異動、昇進、入学、卒業など何かと「変化」が多い。写真はイメージ=(c)Leung Cho Pan-123RF
 加えて社会的な変化も目白押しです。職場では、新人が入ってきたり、異動で同僚や上司が入れ替わったりと、人間関係の変化がほとんどの人に発生します。プロジェクトチームの変更もよくされます。さらに自分自身に昇進、異動、単身赴任など大きな環境の変化が起こることもあります。

 プライベートでは、子供の卒業、入学、就職や、同居する家族の異動・転勤などで、家庭内の雰囲気や生活リズムが変化することも多いでしょう。そのほかにも、PTAや地域の役員などが改選されて新たな活動が増える人もいます。さらに自分自身の引っ越しや、隣人の入れ替わりなどで住環境が変化する人も少なくありません。

■症状がなくても安心はできない?

 こうした「周りの変化に対応できなくて、心身が疲れ果ててしまう」と、3~4月あたりにメンタル不調や体調不良が発生してしまいます。明らかな症状が出ていないからといって安心はできません。変化が目白押しのこの時期には、自覚のないままに「気疲れ」が蓄積し、体力を消耗させている人が少なくありません。木の芽時に不調が顕在化しなくても、5月の連休前後に「五月病」として、疲れが表に出てくるケースも多々あります。

 特に現代社会で働く人は、普段からストレス過多で交感神経(自律神経系の一つ)を過剰に働かせて「過緊張状態」になりやすい傾向があります。食事や休憩時間にも仕事に追われてリラックスできない、夜、帰宅した後も日中の出来事が気になって頭から離れない、といった緊張状態が慢性化している人に、上記に挙げたような「春の変化」が立て続けに起こると、自律神経系の疲労が一気に加速してしまいます。「春の変化」が、ご自身にいくつも起こる可能性のある人ほど、今から意識的なセルフケアが必要です。

■副交感神経を優位にさせる「緩み時間」を作ろう

 春の変化ストレスに対抗するコツは、一言で言うと「副交感神経を優位にさせる時間を意識的に増やすこと」です。自律神経系は、心身を緊張させる交感神経と、逆にリラックス状態にする副交感神経が車の両輪のようにバランスをとることで正常に機能します。普通はこのバランスは生体内で無意識に調整されているのですが、春に変化が多い人は、交感神経系ばかりが活性化してしまいますので、生体の自動調整能力が追い付かなくなりやすい。そのため意識的に副交感神経系を活性化させてあげるとよいのです。

 私はこの副交感神経系を活性化させる時間のことを「緩み時間」と名付け、過緊張になりがちなビジネスパーソンに次のような方法を具体的に提案しています。

【「緩み時間」の作り方】

○睡眠時間を普段より多くし、睡眠負債はできるだけ早く返す

 睡眠は心身をリラックスさせる最高の休息時間であるとともに、自律神経系の最も大切な調整時間です。睡眠時間が不足していては、どのようなリラックス法や健康法も効果は期待できません。夜に連続して最低6時間は眠るように心がけ、体が疲れたり緊張が激しかったりした日はさらにプラス1~2時間は眠るようにするとよいでしょう。

 急ぎの残業でどうしても睡眠不足になった日は、睡眠負債をできるだけ一両日中に返すべくしっかり眠る日を作ってください。ノー残業デーがある場合は別の活動を入れず、ぜひ睡眠負債返済のために使ってください。

○食事時間を普段より長めに!「ながら食事」をしない

 食事中は、副交感神経が強制的に活性化される時間です。仕事をしながら、あるいはパソコンやスマートフォンを見ながらの食事は避け、普段より長めにゆったりと時間をかけて食事をとることで、副交感神経が優位になる時間を作り出せます。

 どうしても早食いの癖がついている方は、マインドフルネス瞑想(めいそう)の一つ、「イーティング瞑想」もお勧めです。次に簡単にやり方を説明します。

(1)食べようとするものを「初めて見る赤ちゃん」になったつもりで観察。その色、形をじっくり眺める。

(2)次に香りをじっくり嗅ぐ。

(3)口にゆっくりと運び、唇に触れた感覚を感じる。

(4)口腔(こうくう)内に入れてもすぐにかまず、舌や粘膜の感覚を大事にし、香りの広がりも感じる。そしてその後、できるだけゆっくりとかみながら、歯触りや味の変化を感じていく。

 「イーティング瞑想」を行うと、自然に食事時間を長くすることができますし、他のマインドフルネス瞑想同様に、心を「今ここ」に戻して集中力を高めたり、情緒を安定させる効果も期待できます。

○休日は予定を入れず、時間に追われない

 春に変化が多い人ほど、休日はできるだけ自分の心の向くままにゆったり過ごしましょう。「○時に待ち合わせ」「○時までに移動」などと時間に追われてしまうと、交感神経系が優位になり緊張が増してしまいます。

 家族で外出する場合は、できるだけゆったりとしたファジーな予定で出かけましょう。交感神経が興奮しやすくなる人混みや都市部は避け、自然の中でのんびりとまどろむタイプのお出かけがお勧めです。趣味の活動やジョギングなどの運動を行うときも、予定を事前にガッツリ決めず「ふらりと楽しむ」感じがリラックス効果をアップします。

 また長時間の乗り物移動はゆっくり座っていたとしても自律神経系が疲れますので、基本的に「近場」で過ごされることをお勧めします。

○新たな日常活動やルールを増やさない

 春は新年度だから、昇進したから、といった理由で、新しい習い事や勉強、運動を始めたり、ダイエットや禁煙にトライしたり、手作り弁当を毎日持参することにしたり……といった新たな活動やルールを加える人も少なくありません。しかしこうした日常生活やリズムのプラスアルファの変化は新たな緊張や疲労を呼び、さらなる自律神経の負担につながることがほとんどです。

 まずは「春の変化」が一段落してから、こうした新たな活動を起こすように心がけましょう。逆に心身の緊張や疲れを和らげるために、習い事やセミナーの回数を一時的に減らす、勉強や家事を少々手抜きするといった「緩める変化」はOKです。

■意識的に「手抜き」をしよう

 実は私自身が、過緊張になりやすい体質なので、春先は特にこうした「緩み時間」を増やすように心がけています。外食やデリを利用して料理の手抜きをはかったり、習い事や外出する回数を減らしたりと、とにかく時間に追われないでゆったり過ごせる日を増やすようにしています。それでも変化が立て続けに起こってイライラしたり頭の中を考えがグルグル回ったりする過緊張気味の日は、第1回「働く人に多い『過緊張』 1分マインドフルネスが効果」で紹介した深呼吸のマインドフルネス瞑想も効果的です。日本特有の春の変化ストレスに負けないために、ぜひ入念なセルフケアを心がけてください。

奥田弘美
 精神科医(精神保健指定医)・産業医・労働衛生コンサルタント。1992年山口大学医学部卒。精神科医および都内20カ所の産業医として働く人を心と体の両面からサポートしている。著書は「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)、「何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから」(扶桑社)など多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ日本人に合ったマインドフルネス瞑想の普及も行っている。

引用元
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO27291100T20C18A2000000?channel=DF130120166093

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 班目幸寛(まだらめゆきひろ) フェイスブック ページへ  友達申請を是非♪  1978年生まれの宮城県出身。  元々は建築科、専門学校卒業後、建築関連の仕事に就いたがが、当人がADHDの気があり(白に近いグレー)、その時の苦労を元にカウンセラーのキャリアをスタート。  カウンセリングのメインは発達障害のカウンセリングだったが、カウンセリングを行うにつれ幅が広がり『分かっているのにできない、やめれない事』等、不倫の恋、経営者の意思決定なども行う。(相談案内へ)  趣味はバイク・自転車・アウトドア・ミリタリーグッズ収集・国内外旅行でリスクティカー。 『昨日よりも若くて、スマート』が日々の目標。  愛読書はV,Eフランクル 放送大学 心理と教養卒業 / 臨床心理プログラム 大学院 選科履修

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