不倫の男女格差論 ~なぜベッキーは叩かれて渡辺謙は叩かれないのか?~【勝部元気のウェブ時評】 – エキサイトニュース

不倫の男女格差論
昨年から不倫スクープを連発している週刊文春が、今度は俳優・渡辺謙氏の不倫を報じています。大物俳優の不倫を文春がすっぱ抜いたということで、世間は大いに盛り上がるかと思えば、さほど盛り上がっていない様子です。

昨年ベッキー氏の不倫騒動が起こった際には、ワイドショーも大々的に取り上げて、CM降板が相次ぎ、ネットでもかなり長く話題として盛り上がったのは記憶に新しいと思いますが、それに比べると明らかに注目されていません。

なぜベッキー氏は騒がれて、渡辺謙氏はさほど騒がれないのでしょうか? それには大きく分けて以下の4つの理由があると私は考えています。

(1)不倫ネタが飽きられた
(2)所属事務所とメディアのパワーバランス
(3)ベッキー氏は期待値との落差が激しかったから
(4)渡辺謙氏が男だから
(5)さらに男社会の階層において上位にあるイメージだから

(1)~(3)は似たようなことを述べている人もいるかと思うので、今回は主に(4)の不倫に対する男女格差と、(5)男社会の序列意識について触れたいと思います。


「男は浮気するもの」という男たちによる弁明



よく勘違いをされるのですが、私は「不倫は倫理的に良くないことだから」という理由で、知人ではない人たちの不倫を咎めるつもりは特にありません。あくまで、そこに男女不平等とジェンダー格差があり、大半の場合、女性が不利益を被るという社会的な構造や文化が問題だと思っています。

「不倫の男女格差」は様々な点がありますが、日本の社会は依然男社会であり、男性の不倫に対してのみ寛容な姿勢を示す人や擁護する人が少なくないというのもその一つです。

たとえば、2017年4月9日(日)放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、リップスライムのSU氏の不倫報道に関して、松本人志氏、東野幸治氏、武田鉄矢氏等が、「男の人はそういうもんだな」「分かっちゃいるけど」「やめられないね」「21歳の女性から『会いたいよー』とか『寂しいよー』とか来たらね」という見解を述べていました。

また、武田氏は、「男ってやつは、女性から受けた傷は女性でしか埋まらないんですよ」「青春時代に俺は女にもてないと落ち込んだ人はどこかでそれを倍くらい取り返さないとバランスが取れないってところがあるんですよ」と力説します。

それに加えて、「お二人(渡辺謙氏とリップスライムのSU氏)とも男性として素敵ですよね。あの素敵さはどっから来るかと言うと、やっぱり女性から来ていますよね。誰か女性がいて、奥さん以外の女性がいて、『素敵よ』って言わないと、あれは出てきません。かあちゃんからだけ『素敵よ』と言われている男と、母ちゃん以外の女性からも『素敵よ』と言われている男は匂いが違う」とも述べていました。


「男性不倫免罪論」の論理的欠陥


これらの不倫擁護発言を聞いて、「いったい何歳まで非モテコンプレックスや被害妄想を引きずっているのだろうか…」と、ある意味恐怖を感じてしまう一方、今回注目すべきポイントは彼らの主張における不倫の主体が、全て男性に限定されていることです。彼等は決して不倫を肯定的に捉えた発言をしているわけではなく、あくまで男性の不倫を肯定的に捉えた発言をしています。

もし私がこのような場にいれば、男女を入れ替えて、「奥さんも21歳の男性から『会いたいよー』とか『寂しいよー』とか来たら、分かっちゃいるけどやめられないでしょうね!」「父ちゃん以外の男性からも『素敵だ』と言われている女も匂いが違いますよね!」「不倫肯定派ですか!じゃあ是非奥さんを紹介してくださいよ~」と皮肉たっぷりに返したいと思っているのですが、残念ながら彼らの身勝手な男女のダブルスタンダードを指摘してくれる人は、現在のメディアの中にはいません。

「女遊びは芸の肥やし」「浮気は男の甲斐性」という表現もあるように、メディアや世論における「男性不倫免罪論」はいまだに根強く残っているのが現状でしょう。もし不倫を肯定するのであれば、いかなる性の不倫も肯定すれば良いのにもかかわらず、わざわざ主語を男性に限定して、男性の免罪を強調していることが、女性差別に該当します。自己の不倫を肯定するのであれば、妻の不倫も堂々と容認しなければフェアではありません。

「男のほうが生物学的に不倫をするものだ!」という反論が聞こえてきそうですが、12世紀のフランスで恋愛が人類史上始めて誕生した時、それは既婚の貴婦人と独身の騎士による不倫の恋でした。つまり、当時の不倫は女性がするものだったわけです。このように、文化によっては女性の不倫も成立するわけですから、男性にのみ不倫の正当化を図る主張は論理的に誤りと言えるでしょう。

男社会の「ゴマすり根性」が生む男性間の格差


では、なぜ彼らは渡辺謙氏を叩かず、川谷絵音氏を叩くのかといえば、57歳の渡辺氏に比べて川谷氏は28歳と若く、男社会のピラミッド構造で下層というイメージ、もしくは逸脱しているイメージがあるからでしょう。渡辺氏は男社会の「上」と見ているため叩かず、「下」と見ることができる川谷氏は叩くというわけです。乙武洋匡氏や育休中の不倫が発覚した宮崎謙介元衆議院議員も、同様に「下」と見なされて叩かれたケースでしょう。

一方で、年齢やイメージに加えて、渡辺謙氏にはハリウッドでの活躍という男社会が大好きな「肩書き」が存在します。昨年は歌舞伎俳優・中村橋之助氏(51)の不倫も報道されていますが、伝統芸能という「肩書き」のある彼もやはり盛り上がりはそれほどではありませんでした。

このように、不倫に関しては男女の格差だけではなく、男社会における地位(正確なものではなくあくまでイメージ)においても格差が存在するのだと考えられます。強き者は容認して弱き者を叩くという、その曲がった「ゴマすり根性」を見苦しいと思って欲しいものです。


なぜ、女性もベッキー氏の不倫を叩くのか?


女性でも男性の不倫以上に女性の不倫を叩くケースは少なくありません。実際、ベッキーを叩いていた人は、女性もかなりいたと感じています。この背景にも男社会の影響が存在すると考えられます。ようするに「男性は若い女性のほうが良い」という男社会の女性に対する「エイジズム(差別的な若さ至上主義)」です。

これは、童話『白雪姫』に登場する魔法の鏡に、若い白雪姫のほうが美しいと言われた王妃の心理状況に近いと言えるでしょう。魔法の鏡の言葉はまさに男社会のエイジズムを表しています。物語では王妃が悪役とされていますが、本当の悪役は魔法の鏡です。にもかかわらず、王妃はロリコン趣味に傾いた鏡を壊してスッキリするというストーリーにはならず、その矛先を白雪姫に向けてしまうわけです。

その様子を「若さへの嫉妬で見苦しい」と感じる男性もいるかもしれないですが、結局のところそのように言っている男性自身がエイジズムという女性への抑圧と差別を生み出してはいないでしょうか? “鏡”を見て、「鏡よ鏡、一番見苦しい差別をしているのは誰?」と問いかけてみて欲しいと思います。


“耐え忍ぶ”ことを妻だけに背負わす社会の仕組み


今回の渡辺謙氏とベッキー氏のケースとは関係無いことですが、一般人における不倫の男女格差についても2点触れておきたいと思います。

まず、常に指摘していることですが、妻が子を引き取った場合、日本では元夫による養育費支払いは僅か2割という問題です。第一子出産時にそれまでの勤務先で働き続けているのは3割という、多くの既婚女性が稼得力を失っている状態で、夫の不倫が発覚した時に、妻は離婚を切り出すことができるでしょうか? 

おそらく大半の女性は子どものことを考えて、“耐え忍ぶ”ことを選択してしまっているのが現状でしょう。一方で、このようなケースで妻が不倫をした時、「相手に養育費を払ってもらえず貧困に陥る」リスクが少ない夫には、「離別という個人的制裁」を言い渡すことに対するハードルは、妻ほど高くない傾向にあると言えます。

ちなみに「プライベートな問題なのだから仕事に影響が出るのはおかしいと思う」という見解を述べる人は少なくありません。確かに、本来は不倫というプライベートな問題によって、仕事というオフィシャルな問題に影響が出ることは好ましいことではないと私も思います。

ですが、日本の「男性稼得中心主義」という文化のせいで、プライベートな関係(家庭)がオフィシャルの部分(男性の稼得)に大きく依存しており、二つが明確に分離できていないのですから、仕事に影響が出ることは当然ではないでしょうか? 「仕事とプライベートは関係無い!」というのであれば、女性が経済的に自立することで、プライベートと仕事を明確に分離できる社会や関係性であることが大前提でしょう。

「不倫する自由」に大きな男女格差がある


そもそも「不倫する自由」に大きな男女格差があります。それに影響しているのが、2つ目の時間的制約の格差です。

というのも、「ワンオペ育児」という言葉もあるように、共働き夫婦であっても家事育児の分担率は女性が50%を占めているカップルが圧倒的多数です。子育てという定点発生のタスクが生じていれば、当然不倫を行うことのハードルも上がるわけですから、女性のほうが不倫に対する制約があると言えるでしょう。

昨年、乙武洋匡氏が不倫した際には「息子が生まれ妻が母になった」という発言をしていましたが、このようなことを言う男性は少なくありません。でも妻が母になるのは、夫が父にならない(=家事育児をしない)から。

そう言うと、「長時間労働だから家事育児をする時間は無い」という反論が返ってきそうですが、それなのに不倫する暇はあるというのでしょうか? 家事育児よりも不倫優先というのであれば、完全に「家庭放棄」「育児放棄」です。

その一方で、子育ては女性の業務という性別役割分業意識が根強いこともあって、女性の不倫に対しては、実際に子育てをしっかりこなしているか否かにかかわらず、「育児放棄だ!」「母親失格だ!」というレッテル張りが付きまといます。それが女性に対する不倫への抑圧として働いている面もあるでしょう。

確かに本当に子供を顧みないのは問題ですが、不倫をしている女性は多くの場合、子育て時間を削減して不倫に走っているわけでないので、その指摘は誤りだと思うのです。むしろ不倫している日本人男性のほうこそ育児をまともにしていない人が大半のわけですから、育児放棄で父親失格と言えるのではないでしょうか?


これからの時代、男社会の身勝手さはダサい


今回は不倫に関する男女格差の問題について見てきました。このように男性に限定して不倫を肯定しようとしても、「論理的矛盾と自分勝手さを自ら平然とさらけ出してダサい」という結果に陥るだけなのですが、本人たちはそれに全然気が付いていません。

私たちは彼等を反面教師にして、「男性不倫免罪論」は人として恥という自覚をしっかりと持って、より良い関係と良好なパートナシップを築いていきたいものですね。
(勝部元気)
引用元

昨年から不倫スクープを連発している週刊文春が、今度は俳優・渡辺謙氏の不倫を報じています。大物俳優の不倫を文春がすっぱ抜いたということで、世間は大いに盛り上がるかと思えば、さほど盛り上がっていない様子で...

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 班目幸寛(まだらめゆきひろ) フェイスブック ページへ  友達申請を是非♪  1978年生まれの宮城県出身。  元々は建築科、専門学校卒業後、建築関連の仕事に就いたがが、当人がADHDの気があり(白に近いグレー)、その時の苦労を元にカウンセラーのキャリアをスタート。  カウンセリングのメインは発達障害のカウンセリングだったが、カウンセリングを行うにつれ幅が広がり『分かっているのにできない、やめれない事』等、不倫の恋、経営者の意思決定なども行う。(相談案内へ)  趣味はバイク・自転車・アウトドア・ミリタリーグッズ収集・国内外旅行でリスクティカー。 『昨日よりも若くて、スマート』が日々の目標。  愛読書はV,Eフランクル 放送大学 心理と教養卒業 / 臨床心理プログラム 大学院 選科履修