こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの加藤梨里です。この連載では、20代~30代のワーキングウーマンの皆さんへの家計相談を通して私が感じた「前向き女性になれる」お金との付き合い方についてお話しています。
前回は、結婚前に聞いておくべきお金についてお話しました。お金の話はなかなか切り出しにくいものですが、結婚生活を大きく左右する重要な問題です。最低限、借金がないか、生活費がいくらか、貯蓄がいくらかは聞いておき、パートナーのお金の使い方や価値観を知っておきたいものです。
ところで、相手のお金の使い方や金銭感覚は冷静にチェックできそうですが、自分のことはどうでしょうか? 日頃どんなものにお金を使っているか、買い物の癖を客観的に把握している人は、私自身も含めて意外と少ないと思います。
普段は、無駄遣いせずにお金をしっかり管理しているつもりでも、サイフの紐が緩みやすいのがセールです。50%オフで支払いをする瞬間は、もともと欲しかった物でなくても安い買い物ができて得した気分になるものです。しかし、帰宅して時間が経つと本当に買うべき物だったかなと後悔することも少なくありません。
節約を心がけている人ほど、買うならセールになっている時にという気持ちに強くかられる様です。自分がお金を使いたいと思うタイミングや買い物癖など、結婚前に相手のみチェックするのではなく、自分自身についても見つめ直す時間を作ってみるのも良いでしょう。
不安の解消に占いにお金をかけるのはあり?
ときどき、占いにお金をかける人に出会うことがあります。「あの占い師さんは当たる」と聞けば、遠方であっても数か月前から予約をして、1時間1万円や2万円の料金をいとわずに出向く人もいます。かくいう私も20代の頃、恋愛運や結婚運を知りたくて、よく当たる占い師さんの情報を友人と交換したり、一緒に占ってもらいに行ったりしたものです。当時は収入が低く、生活にゆとりがあるわけではありませんでしたが、「自分の将来がかかっているから」と、結構な金額を奮発していました。
占いは統計学などに基づき、実際に当たる結果を言い渡されることも大いにあります。ただ、宝くじと同じで、当たらないことももちろんあります。冷静に考えると、あんなにお金をかけなくても良かったのではと、我ながら反省してしまいます。
翻っていま、ファイナンシャル・プランナーの仕事をしていると、シングルの女性から「この先、ずっと一人で生きていくかもしれない。不安だから、お金を貯めておきたい」と相談を受けることがあります。今の生活費で平均寿命まで生きると総額いくらかかるのか、いつまで仕事で収入を得られるか、そして、退職までに毎月いくら貯めれば良いのかを計算すると、「じゃあ、今月から●万円貯めれば大丈夫なのですね」と、彼女たちはいくぶんほっとします。
先の見えない将来への不安を解消するために、占いにお金をかけるか? ライフプラン相談にお金をかけるか? 正解はありませんが、どちらかといえば後者の方が合理的にみえます(手前味噌かもしれませんが)。
それでも私たちは、一見すると意味のなさそうなことをしてしまいます。ほかにも、女子会と称して友達同士でスイーツを食べに行ったり、旅行に行ったりして夜中まで恋愛や結婚の話をするのも、シングルの女性なら一度や二度は経験があるでしょう。そんな様子をみて、何の解決策も生み出さないものに時間とお金をかけるのはばからしいという人もいます。
確かに、お金をかけても不安そのものはなくなりません。問題解決に向かって真っすぐに進んでいるわけでもありません。ですが、不安でざわつく心が鎮められる効果は得られます。それが占いであれ、スイーツであれ、人と話をして頭を整理することや、おいしいものを食べてうれしい気持ちになることには十分な価値があります。それを体験できる時間に、お金をかけているともいえます。
お金の使い方には揺らぎがある
日頃の買い物でも、私たちは常に冷静に、効率的に判断しているわけではありません。たとえば外食をするときに、「前菜とメインとデザートがついていて、1000円ならお得感がある」と感じて選ぶこともあれば、「今日はハンバーグを食べたいからハンバーグランチにする」と決めることもあります。あるいは、「あまり食べたいものがないけど、これでいいかな……」と特に意思もなく決めることもあります。
食事にお金を使うことひとつをとっても、お金を出すまでに頭の中で考えることは常に変わります。ときには「なぜ、それにお金をかけるのか?」を、自分で説明できない買い物をすることもある。人にはそんな揺らぎがあります。
もちろん、何も考えずにお金を使ってばかりいるのは問題です。生活をやりくりし、今後豊かに暮らしていくためには、収入の範囲内で生活する管理力が欠かせません。だからこそ、長い人生で自分を養い続けていくための持久力が必要です。そのなかで大事なのは、合理的になることだけではなく、揺らぎのある自分を知ること。
きっちり節約しよう、合理的に買い物をしようと自分を縛るだけではなく、遊びの部分を持たせておくことも大切です。お金の管理にゆとりを持つことで、気持ちにもゆとりが生まれ、不安な気持ちも小さくなるでしょう。お金の使い方には女性の心理が影響することを理解することは、結婚後のお金についてパートナーと前向きに話し合える第一歩かもしれません。
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