「スマイル0円」は廃止すべき!?
働く人々のメンタルヘルスがますます危険に晒されている傾向が浮き彫りになっている。その中でも特に働く若い女性の精神衛生が悪化しているのだ。
■働く若い女性の26%にメンタルヘルスの高リスク
日本の現状を直接反映するものではないが、昨年秋に発表されたNHS(イギリス国民保健サービス)の研究が衝撃的だ。若い女性の精神疾患の罹患率が急上昇していたのだ。
NHSでは1993年から2014年まで7年毎の区分で、生産労働人口の人々の精神衛生状態と健康についての調査を実施しているのだが、2014年の最新データが驚くべきものになっている。なんと16歳から24歳の女性の26%が何らかの精神疾患を抱えており、自傷行為を行なったことがあると報告しているのだ。ちなみに同じ年齢層の男性の場合は約10%に留まる。
統計をとりはじめて以来、状況は悪化の一途を辿っているのだが、1993年には若い女性の精神疾患(週に1度以上のうつや不安障害などの発症)は19%で、毎年少しずつ悪化して21年で26%まで上昇したことになる。そして1度でも自傷行為を行なったことがあるという若い女性が同じく26%にものぼっているというのはまさに衝撃的だ。同じく16歳から24歳の女性の13%が心的外傷後ストレス(post-traumatic stress)を抱えており、4%が双極性障害(bipolar disorder)に苛まれているという。調査を行なった研究者によれば、今後この数字が好転する要素はまったくないということだ。
「BBC」より
いったい何がこの衝撃的なデータの原因になっているのか? 専門家によれば、現在の社会の経済的低迷が一番の原因であるということだ。若い労働者の多くは、失業や貧困、自己破産のリスクを時折意識せざるを得ない状況下にあるという。特に若い世代は社会人1年目から低迷した経済下での就業を余儀なくされているため、明るい展望が描き難いといわれている。
そしてもうひとつ、2009年以降に本格的に普及したSNSの影響も無視できないということだ。確かにSNSは孤独を緩和してくれるものにはなるが、匿名の悪意に晒されるケースも増え、特に若い女性には思わぬリスクを秘めているという。人々の交流を促進するSNSでメンタルヘルスを損なうのは皮肉な話であるが、SNSにはネガティブな側面も確かにあるということだろう。
この10年で、メンタルヘルス相談室への電話件数は3倍に増えているという。しかも一説によれば、電話をする人は疾患を抱えている人の半数程度であるともいわれている。したがって精神衛生の悪化状況の実態はデータよりももっと酷いものかもしれない。
この話題をとりあげた「BBC」オンラインの記事では、それまで快活な職場の花であった23歳の女性がある日を境にまったく仕事ができなくなったケースや、20歳の試用期間中の女性がある日突然、不安障害を発症したケースなどを紹介している。仕事のうえでも男女平等が叫ばれている昨今だが、このデータが示しているのはやはり職場環境は若い女性にとってよりストレスフルなものであるということだろうか。
■“笑顔の接客”や“スマイル0円”は廃止すべきか
より本質的な理解としては、若い女性が多く就業しているサービス業態の仕事で“感情労働”が行なわれているという指摘だ。
感情労働(emotional labor)とは、アメリカの社会学者で作家のアーリー・ラッセル・ホックシールドが提唱した働き方の概念で、職務において感情のコントロールを行なう種類の労働のことである。一番わかりやすいのは“笑顔の接客”などである。そしてこの感情労働は、考えている以上にメンタルヘルスを損なうものであることが昨今強く主張されている。
「感情労働は相応のコストを伴います。経営陣はこのことをよく考慮しなくてはなりません」と語るのはアメリカ・ペンシルバニアの組織心理学者、アリシア・グランディ氏だ。2015年に発表した研究においてグランディ氏は、作り笑顔など感情を表に出す“職務”を禁止にすべきであるとさえ主張している。
「Science News」より
研究では感情労働に従事する勤労者を10年以上調査して、感情労働のメリットとデメリットを詳しく分析している。結論として感情労働における過度な“おもてなし”はイメージに反して予想以上のデメリットを生み出しており、感情の表出を義務付けることは即刻禁止すべきであるという見解に達している。
例えば作り笑顔などは絶えず重いものを抱えているのと同じような身体的疲労を伴うものであり、そこで疲れてしまえば業務上のパフォーマンスが低下してしまい本末転倒の事態を招くことになる。そして最悪の場合、従事者を“燃え尽き症候群”に導くことになるのだ。
そして営業面においても“笑顔の接客”や“スマイル0円”が実際に利益を生み出しているという根拠はどこにもないという。例えば店舗などでも、客が求めているのは笑顔などではなくプロフェショナルな対応であるということだ。
多くの女性がサービス業態に従事しているが、働く若い女性のメンタルヘルスの悪化がこのような感情労働からくるものだとすれば、これまでは当然だと思われてきた“笑顔の接客”などのサービスのあり方を抜本的に見直す時期に来ているのかもしれない。
■作り笑いではやっぱり楽しくならなかった?
「いつでも笑顔で」という笑顔礼賛派(!?)の言い分のバックボーンには、笑顔でいれば自然に気分のほうも晴れやかになるはずだという“信仰”だ。これまでもっともらしく信じられてきたこの主張だが、最近の研究でかなり危ういものになってきているのだ。
1988年にドイツで行なわれた研究では、意図的な笑顔と不機嫌な表情でそれぞれマンガを読んでもらい内容の面白さを評価するという実験を行なっている。笑顔と不機嫌な表情の作り方がまたユニークで、ペンを前歯で噛んでくわえてもらうことで“笑顔”にし、歯ではなくつぼめた唇でペンをくわえてもらうことで“不機嫌”な表情にしているのだ。
実験の結果、“笑顔”でマンガを読むと内容がより面白く愉快なものに感じられる傾向が明らかになり、笑顔が実際にメンタルへ影響を及ぼすという表情フィードバック仮説(facial feedback hypothesis)が提唱されて幅広く信じられるものになった。しかし最近の研究でこの実験があらためて行なわれ、その結果この表情フィードバック仮説に大きな疑問が突きつけられることになった。
「Nature」より
最近になって、心理学者たちの間でこれまでの“定説”と化している心理学史上の有名な実験をもう一度改めて検証してみようという動きが起っている。その中でのこの表情フィードバック仮説を裏づけるものとなったドイツの実験が再現されることになったのだ。
オランダ・アムステルダム大学のエリック=ジャン・ワーゲンメーカーズ教授が主導した研究では、17の研究室で計1894人の参加者によってこのペンをくわえてマンガを読む実験が行なわれた。分析の結果、2つの表情の間に意味のある差は認められないという結論に達したという。
1888年の研究には2つの欠点があると指摘されていて、当時の実験ではビデオカメラで参加者を撮影していたのだが隠し撮りではなかったため、参加者がカメラを意識して感情を抑える傾向があったのではないかという。もうひとつは読んでもらったマンガが適切なものではなかったという点で、その時代の学生はまず読まないような古典的なマンガ作品が使われたのではないかということだ。
しかしながら今回の研究だけで表情フィードバック仮説が完全に否定されたわけではないが、「いつも笑顔で」というやや精神論的ニュアンスもある“信仰”が揺らぐものにはなったと言えそうだ。ともあれいろんな意味で“笑顔”を考え直す話題が最近続いているようである。
文/仲田しんじ
フリーライター。海外ニュースからゲーム情報、アダルトネタまで守備範囲は広い。つい放置しがちなツイッターは @nakata66shinji
引用元
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