パソコンにこっそり保存していた、愛人との不倫写真日記を削除しないまま、認知症に罹患した男性、SNSから住所を割り出し、気に入った女性職員をストーキングする男性など、ハイテク時代の老人たちは、一昔前からは考えられないような“事件”を引き起こす。対応に苦慮する家族たちを取材した。(フリージャーナリスト 秋山謙一郎)
「とにかく見て!黙って見て!!私の口からはとても説明できへんわ…」
今年45歳になった息子は、69歳になったばかりの母親から、父親のパソコンに入っているファイルを見るように促された。“Y”とタイトル名のつけられたそのファイルには、「Y-1996」「Y-1997」…「Y-2007」と、更に1998年から2007年までの年ごとに分類分けされている。
それらファイルを開いてみると、そこには几帳面な性格の父親らしく「P1998Y」「D1998Y」とさらにファイリングされていた。
取り乱した母親に急かされて、息子はファイルのひとつを開けてみた。“P”がつくそれを開くと同時に、性具を体に入れたままの全裸姿の若い女性や、明確に性行為真っ最中の絡み合った男女の様子を撮影した静止画と動画がパソコン画面一杯に拡がる。そこに映っていたのは紛れもなく、現在90代半ばの父親と、見知らぬ若い女性の姿だった――。
「後で母から聞きましたが“Y”とは、父の不倫相手の名前、“ユカ”を指します。察するに“P”と分類されたファイルは『ポルノ』の意味。“D”は『デート』です。Pのファイルに出てくる女性と同じ人物が、父と観光地やレストランで食事する様子がDのファイルに収められていましたから。まさか母も69歳にして父の『不倫記録』を目の当たりにするとは思いもしなかったでしょう」
神戸市内で自営業を営む息子は、こう母を慮る。
地場企業で役員をしていた父親は90年代のIT黎明期からパソコンを操り、2000年代に入ってからは、「メンテナンスと称して自分でパソコンのリカバリーをよくしていた」(45歳息子)という。母親は今でも家計簿はずっと表計算ファイルでつけている。両親共に年齢の割にはパソコンスキルに長けていた。
「とはいえ他人がパソコンを開かないようパスワードをかける――といったことは両親ともできないのです。母にすれば認知症を患った父の“終活”のつもりだったのでしょうが……」。こう語る45歳息子は、「もし父が自分のパソコンにパスワードをかけてさえいれば、今回のようなことは起こらなかったかもしれない」と話す。
「父の『不倫記録』を見ていると、観光地にしろ、レストランにしろ、全て、不倫相手の彼女とそこに行く前に、母を“下見”のために使っていたことがわかりました。旅行好きの父でしたが、まず母と一緒に行き、そこが良ければ後日、彼女を連れての逢瀬に使う…そういうパターンです」
こう語る45歳息子と母親が、11年に及ぶ父親の「不倫記録」を見てはたと気づいたことがある。父親よりも約50歳年下の不倫女性が、年を重ねるごとに父親好みのファッションに変わっている。それが2人の関係性をよく表しているように見えた。
引用元:
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