スマホどうぶつの森が地獄でした
12.03 19:00アスキー
楽しいキャンプ場
家電アスキーの盛田 諒(34)です、こんにちは。今年2月に赤ちゃんが生まれ育児連載などをやっている父親ビギナーです。家事と育児と仕事でクタクタになった体と心がここではないどこかを求め日夜インターネットをさまよっています。
徘徊先の1つとして、11月21日に任天堂が配信したスマホゲーム「どうぶつの森ポケットキャンプ」(ポケ森)にも手を出したのですが、1週間経って段々つらくなってきました。なぜかと考えるとポケ森の本質は仕事だからです。一日の大半を営業行為に費やすことになり、仕事と仕事の合間に仕事をしている感覚になります。やがて人生の地獄を味わっているような気分になってきました。
ポケ森の主人公=プレイヤーは自営業者、言葉を話すどうぶつたちが集まる自治体=森でキャンプ場を管理運営する個人事業主です。家はなく小さなキャンピングカーに住んでいます。キャンピングカーやキャンプ場には家具がほぼありません。設備投資をしようにもお金(現地通貨=ベル)はほとんどありません。要するに身ひとつで出てきてしまったわけです。詳しいことはわかりませんが事情があったのでしょう。ちなみにアメリカ南部に住む保守的な貧困層のことをレッドネックと言いますが、トレーラーハウスに住んでいるというのがステレオタイプです。
お金のない主人公に経済活動をすすめるのが役所職員のしずえさんです。
原則は仕入れと営業。森では果物、魚介類、昆虫などが自由に収穫・採集できるようになっています。フィンランドにある「自然享受権」(誰でも公共の森に入って自由に果実やキノコを収穫してもよいとする権利)に似た権利を自治体として来訪者に認めているのでしょう。主人公はしずえさんに言われるまま資源を仕入れてどうぶつに営業し、キャンプ場の設備を作るためのお金と材料を調達します。
仕入れと営業というと難しく感じますが、実際はとても簡単で楽しいです。
仕入れは川で魚を釣ったり、虫取り網でチョウを捕まえたり、木からりんごを落して拾ったりでアクティビティ感覚。営業もどうぶつたちが「おねがい」として求める品物を手渡すだけ。遊びながら仕事をするような感覚です。ただ雑談をしているだけでお金や材料をくれることさえあります。ときには手渡した品を使い、川魚の炉端焼きに誘ってくれたり、貝殻で一緒にアクセサリー作りをしようと誘ってくれたり、友だちのように付き合ってくれます。とても楽しい時間です。
お金と材料がたまったら、自治体唯一の家具職人に設備や施設を発注したり、自動車改装業者に依頼してキャンピングカーを改装します。どうぶつたちをお客さんにするために必要な投資です。主人公が営業を重ねることで信用を得られるようになると、どうぶつたちは「キャンプ場にコレがあったら行くんだけどな」と要望を伝えてくれるようになります。設備投資をした後に「いいキャンプ場ができたので遊びにきませんか」と誘うと、どうぶつたちは喜んで滞在してくれます。
どうぶつたちは基本的にみんな初めて会う主人公に優しく、気持ちのいいやりとりをしてくれます。あまったお金と材料で自分の好きな家具も作れます。プレイを進めると「キャンパーレベル」が上がり、作れる家具も増えていきます。森の中では主人公と同じ立場の人々(ほかのゲームプレイヤー)と出会い、キャンプ場に「いいね!」をつけてもらうSNSのような喜びもあります。ツイッターで自分のキャンプ場を紹介するプレイヤーも多く、SNS映えするキャンプ場を作る楽しみもあります。こんなに楽しいことばかりでいいのかというくらい充実した生活を送れます。リゾートで遊び半分のバイトをしているような気持ちになります。
しかしそれは最初だけでした。森全体に地獄みを感じる
初めに違和感をおぼえたのは、1日ぶりに会ったどうぶつの冷たい態度です。たとえばハンナというロックが好きな姉御タイプの赤いイヌ(♀)。友だちのように気さくに話してくれていた彼女が、「こんにちは」と他人行儀に。おねがいされていた品を手渡しても「ウチをマブダチと認めてくれたんだね」と言い、まるで初めて会ったかのような態度をとられます。森には基本的に現実とおなじ時間が流れているのですが、「なかよし度」が低いと、次に会ったときの会話はそれほどフランクではありません。少しでも営業を怠ると主人公のことは忘れられてしまいます。
その後ハンナに話しかけたときの「あぁ アンタかい」という退屈そうな一言で本当に心が折れそうになり、そこから営業のプレッシャーが上がっていきました。
一度プレッシャーを感じてからは、どうぶつたちのもとに通うのは営業行為そのものだと感じるようになりました。飛び込みで見つけた見込み客のもとに日参し、身近な要望にこたえて信用を獲得し、ニーズを探り、クロージングを進め、契約を獲得する流れが営業でなくてなんでしょうか。どうぶつたちの信用を得てキャンパーとしてのレベルが上がると出会えるどうぶつの数も増えるのですが、それはつまり営業先が増えることにほかなりません。楽しく過ごしていた毎日が、突如終わりのない営業地獄に変わってしまいました。
いざ地獄を感じはじめると、森の仕組みそのものがあやしく見えてきます。
森で仕入れと営業をしているのはプレイヤーだけです。どうぶつたちはお金と材料を無尽蔵にもっていて、自分たちが体を動かして品物を手に入れようという気がありません。どうぶつたちは「おなかがすいたな~」などと言い、主人公から新鮮な食品を買い、バーベキューや炉端焼きのようなパーティー料理、昆虫観察やスケッチなどの趣味を楽しんでいるだけ。どうぶつたちには巨大な不労所得があるか、主人公が現地の相場感を知らないのをいいことに劣悪な金額で労働力としてこき使っているものとさえ想像してしまいます。たとえば「ヒラメ2匹、アジ2匹」のお礼が「200ベル・ペラペラのもと×2・カチカチのもと×1」と言われたとして、この条件が妥当か判断し、交渉する権利を主人公はもっていません。
お金と材料が価値をもつ根拠になっているのは、家具職人のカイゾーさん、まめつぶ商店・エイブルシスターズ・シューシャンクといった移動販売業者、そしてカスタムショップOKモーターズの価格相場のみ。いずれもどうぶつたちが購入している姿を見ることはできず、主人公を含むプレイヤーのみが利用しているものとも考えられます。人間相手のぼったくり価格をつけているとも想像できます。
OKモーターズにいたってはぼったくりどころか悪徳業者そのものです。
キャンタローさんと呼ばれている従業員の1人から「キャンピングカーをカスタマイズしませんか」と気さくに提案され、友だちのような態度からそういうサービスなのかと思って喜んで頼んだところ、相場に比して法外とも思える多額のローン(借金)を組まれてしまいました。他のプレイヤーからもおなじ被害にあったという話を多数聞きました。かわいい見かけに隠された地獄を象徴するような事例ではないかと感じさせられます。ちなみに原作の「どうぶつの森」は、タヌキのたぬきちさんに自宅を強制的に改築されて借金地獄に陥り、ローン返済のためにあらゆる経済行為をするという悪夢のようなゲームです。
きわめつけはしずえさんです。自営業者としての基本ルールを主人公に教えたあと、「しずえチャレンジ」制度を紹介してきます。労働などで一定の基準を満たすと補助金のように材料を与える制度です。中には現実世界のお金で買える葉っぱのお金「リーフチケット」(1枚60円相当)をもらえるチャレンジもあり、主人公はリーフチケット欲しさに基準を満たそうと必死に働くことになります。中には「ローンを完済しよう」など特定業者との癒着を匂わせるチャレンジもあり、自治体としてのモラルを疑ってしまうこともありました。
このようにしてポケ森はわたしたちが暮らす現実世界とおなじようにウソとだましあいが横行する欺瞞の森なのではないかと思ってしまったのですが、そこまできて、これは勝手なプレッシャーからくる妄想ではないかと気づきました。スローライフを楽しもう
営業といっても期限つきのノルマなどはありません。経済活動を一切しなくても主人公の生活は保証されています。主人公は森の中で何をしていてもいいのです。よけいなことを考えず「釣りたのしー!」「庭づくりおもしろーい!」「キャラメルさんかわいー!」と、どうぶつたちと一緒に楽しんでさえいれば何も問題がないのです。わたしの妻に「地獄じゃない?」と伝えたのですがまったく同意を得られず、「釣り楽しいけど?」ときょとんとされました。キャラクターの反応ひとつにプレッシャーを感じるほど営業行為に熱中していた自分の問題ではないかという考えがようやく浮かびました。仕事のしすぎでどうかしてしまったのだと思います。
ポケ森は、本家どうぶつの森に比べるとやや自由度が低いという指摘は見かけます。ポケ森でプレイヤーが自由に遊べるのは家具をそろえてレイアウトする「もようがえ」だけで、ほかは基本的に“おつかい”なので、すぐ作業になってしまいます。そこが一種の地獄を感じさせられるところなのかもしれないとも感じました。
ちなみにゲームとしてよくできているなと感じたのは、現金で購入できるリーフチケットでどうぶつたちの信用を直接買えないことです。どうぶつと仲良くなるには地道な仕入れと営業を通じて要求をかなえていくしかありません。仕入れをリーフチケットでまかなうこともできません。自分で体を動かすか、ほかのプレイヤーから、ベルを使って購入することになります。もし信用を現実のお金で買えることになっていたらゲームの倫理観が完全に崩壊していたと思います。
ちょっと長話がすぎました。そろそろナシが実る時間なのでワサワサの森へ収穫にいこうと思います。またキャンプ場でお会いしましょう。
■どうぶつの森 ポケットキャンプ
内容:現実と同じ時間が流れるどうぶつたちが暮らす世界で、気ままなキャンプ場作りが楽しめる。
価格:無料 (一部有料のコンテンツあり)
配信プラットフォーム:App Store,Google Play
対応端末:iOS 9.0以降・Android 4.2 以降
販売元: Nintendo Co., Ltd.
© 2017 Nintendo.引用元
だがそれがいい。
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